太陽を覆う「もう一つの月」の不思議な光景!NASAの新ミッションPUNCHが捉える

NASAが打ち上げた新たな太陽観測ミッション「PUNCH(パンチ)」。その4機の小型衛星からなるチームが、まだ試験運用期間中の4月27日、太陽光の霞の向こうに月が横切る、なんとも不思議な画像を捉えた。日食のように太陽が隠れ、その手前に月が浮かんでいるのだが、それだけではない。どこか「もう一つの月」を思わせる光景が広がっているのだ。一体、これはどういうことだろうか?
この画像は、PUNCHに搭載された狭視野カメラが撮影したもの。中央の暗く丸い影は、太陽の強烈な光を遮るための「オカルター」と呼ばれる円盤状の装置が生み出している。太陽本体の眩しさをこうして人工的に隠すことで、まるで皆既日食の時のように、普段は観測しづらい太陽の最も外側に広がる希薄な大気「コロナ」の繊細な構造や、そこから流れ出す太陽風の様子を捉えようというわけだ。
画像で太陽を覆い隠すオカルターの周囲に見える黄金色の輝きは、オカルター自身が反射した太陽光。そして、その手前に浮かぶ月は、なんと地球からの反射光(地球照)によって照らし出されている姿なのだ。PUNCHが本格的な科学観測を開始する6月9日以降は、こうした画像から迷光(目的外の光)などを取り除く画像処理が行われ、太陽コロナのより詳細な姿が明らかになる予定だ。
太陽風の正体に迫れ!PUNCHの使命と私たちの生活
PUNCHの主な使命は、太陽から絶えず吹き出しているプラズマの嵐、「太陽風」を研究することにある。この太陽風は猛烈な速さで宇宙空間を駆け巡り、地球を含む太陽系全体に影響を及ぼす。地球に到達すると、美しいオーロラ現象を引き起こす一方で、「地磁気嵐」と呼ばれる現象を誘発し、私たちの生活に不可欠な送電網に障害を起こしたり、無線通信を途絶させたり、さらには人工衛星を故障させたりすることもあるのだ。
太陽は毎秒30万トン以上もの物質を太陽風として宇宙空間に放出しているというから驚きだ。PUNCHは、この太陽風がどのように生まれ、どのように宇宙空間を伝わっていくのかを詳しく調べることで、地磁気嵐のような「宇宙天気」現象の予測精度を高め、私たちの社会インフラを守るための重要な手がかりを得ようとしている。太陽の活動を理解することは、地球での私たちの生活を守ることにも繋がるのである。
最強タッグで挑む太陽の謎:PUNCHとPSPの連携、そして未来へ
PUNCHが捉える画像は、太陽の複雑な磁場そのものを直接映し出すわけではない。しかし、磁力線に沿って形作られる巨大なプラズマのループ(プロミネンス、フィラメントとも呼ばれる)や、太陽表面からの物質の噴出(アウトバースト)の様子を詳細に観測することで、太陽風が生成されるメカニズムや、特に地球に大きな影響を与えるような激しい宇宙天気の発生源となる領域を特定するのに役立つ。

さらにPUNCHは、既に太陽コロナの内部にまで到達し、直接観測を行っているNASAの探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(PSP)」と連携することで、その真価を最大限に発揮する。PUNCHの主任研究員であるクレイグ・デフォレスト氏は、「PSPとPUNCHは、太陽物理学における異なる二つのアプローチを結びつけようとしています。PSPがいわば“現場測定”で太陽コロナに直接触れてその性質を測るのに対し、PUNCHは“遠隔イメージング”で太陽コロナが私たち地球にどのように影響を及ぼすのかを捉えるのです。この二つのミッションは、互いの強みを生かし、見事に補完し合っています」と語る。
PUNCHは、まもなく試験運用期間を終え、本格的な科学観測フェーズへと移行する。そして、そこで得られた貴重なデータは、誰もがアクセスできるよう公開される予定だ。PUNCHとPSPという強力なタッグによって、太陽風、そして太陽そのものの謎がどこまで解き明かされるのか、期待は高まるばかりだ。
参考:Live Science、ほか
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2024.10.02 20:00心霊太陽を覆う「もう一つの月」の不思議な光景!NASAの新ミッションPUNCHが捉えるのページです。月、日食、NASA、太陽などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで