死の瞬間、私たちの脳は何を見ているのか?科学が解き明かした“脳が見せる最後の光景”

人は死ぬとき、一体何を見るのだろうか。そして、その先には何が待っているのか――。
これは人類が有史以来ずっと抱き続けてきた根源的な問いである。古来、人々はこの答えを芸術や宗教、哲学の中に探してきた。そして現代、最先端の科学が、ついにその謎の一端を解き明かし始めている。
死の瞬間に私たちの意識や脳に何が起きるのか。それは長らく神秘のベールに包まれてきた。だからこそ、死の淵から生還した人々が語る「臨死体験」は、いつの時代も私たちの好奇心を強く惹きつけてやまない。しかし、最新の研究が、その神秘的な体験の裏側にあるかもしれない脳の活動を少しずつ明らかにしつつあるのだ。
心停止後も続く脳活動―「人生の走馬灯」は現実だった?
2023年に発表されたある研究は、全く別の調査の過程で驚くべき発見を偶然にもたらした。研究チームは、てんかんを患う87歳の患者の脳波を測定していた。ところが、その最中に患者が心臓発作を起こし、亡くなってしまったのだ。
悲劇的な出来事ではあったが、研究者たちは、人が死を迎えるまさにその瞬間の脳活動を記録するという、極めて貴重なデータを得ることになった。記録を分析すると、心臓が停止する前後30秒間にわたり、脳の特定の領域が活発に活動していることが判明した。その領域とは、記憶や夢、そして情報の整理といった私たちの意識の根幹をなす部分だ。
この研究を率いたアジマル・ゼマール博士は、「脳は死の直前に、人生における重要な出来事を最後に一度だけ再生しているのかもしれない。これは、臨死体験で語られる内容とよく似ている」と語る。もちろん、これはまだ仮説の段階だ。しかし博士は、この発見が「生命が正確にいつ終わるのかという我々の理解に挑戦を投げかけるものであり、臓器提供のタイミングといった重要な問題を提起する」と指摘している。
実は、死の直後に脳が活発化することを示唆する研究は、これが初めてではない。2015年にも、神経学の専門家であるジモ・ボルジギン教授が、患者の心停止後に脳の一部で「活動の急増」、あるいは「嵐」と呼べるような現象が起きることを発見している。この活動は、場合によっては最大で6分間も続いたという。
さらに驚くべきことに、活発化していたのは、私たちが目覚めて世界を認識したり、鮮明な夢を見たりするときに働く「意識的な経験」に関わる領域だった。それらの領域が記憶を司る部分と盛んに情報をやり取りしていたのだ。まるで、死の深い淵へ沈んでいくその瞬間でさえ、脳の中では驚くほど生命らしい活動が繰り広げられているかのようであった。

「生命の終わり」を問い直す発見
これらの発見は私たちに何を教えてくれるのだろうか。人が死ぬときに「人生が走馬灯のように駆け巡る」という言い伝えは、単なる比喩ではなく、実際に脳内で起きている現象なのかもしれない。
もちろん、死の謎のすべてが解明されたわけではない。しかし、科学が一つひとつ新たな情報を明らかにするたびに、私たちは人類最大の謎に対する答えへと、ほんの少しずつ近づいている。これらの研究は、単なる好奇心を満たすだけでなく、「生命の終わりとは何か」という、私たちの価値観そのものを揺さぶる、深い問いを投げかけているのだ。
参考:THE Mirror、ほか
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2024.10.02 20:00心霊死の瞬間、私たちの脳は何を見ているのか?科学が解き明かした“脳が見せる最後の光景”のページです。臨死体験、NDE、走馬灯などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで