「虫の知らせ」は未来からの記憶だった? 科学が解き明かす予知能力の謎。脳は時間を超えるのか

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イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

「なんだか嫌な予感がする」「この光景、どこかで見たことがある…」誰もが一度は経験するであろう、こうした不思議な感覚。それは単なる気のせいではなく、あなたの意識が時間を飛び越え、未来から送られてきた「記憶」なのかもしれない。科学者たちは今、予知や虫の知らせといった超常現象のメカニズムに、真剣に迫ろうとしている。

科学者が挑む「予知夢」と時間の壁

 認知神経科学者のジュリア・モスブリッジ博士。彼女自身、7歳の頃から予知夢を繰り返し見る経験者であり、その不思議な体験が研究の道へと彼女を導いた。初めは半信半疑だった両親も、彼女が夢日記に詳細を記録し始め、それが次々と現実のものとなるのを見て、考えを改めざるを得なかったという。

 モスブリッジ博士は、多くの人が予知の存在を信じられないのは、「時間は過去から未来へ、一方通行で直線的に流れる」という強固な思い込みがあるからだと指摘する。

「予知を理解することは、実は難しくありません。ただ、経験したことがない人にとっては信じがたいだけなのです。物理学者でさえ、時間の正体はまだ完全には解明できていないと認めています。私たちは、科学的であるためには時間は直線的だと考えなければならない、という考えに囚われすぎています。しかし、それは本当に真実なのでしょうか?」

 彼女によれば、超常現象や予知に対する抵抗感の多くは、未知なるものへの恐怖や、「世界は自分が見たままではないかもしれない」という不安から来ているという。

未来の出来事に「脳」は先に気づいている

 では、予知は科学的に証明できるのだろうか。この難題に長年取り組んできたのが、超心理学者のディーン・ラディン博士だ。彼は、「私たちの意識は、日常的に感じる時間の流れを超越し、過去や未来から情報を受け取ることができる」という仮説を立てた。

 そして1990年代半ば、ラディン博士はそれを証明するための画期的な実験を行った。被験者を脳波(EEG)測定器に繋ぎ、コンピュータ画面のボタンを押してもらう。ボタンを押すと、日の出のようなポジティブな画像か、交通事故のようなネガティブな画像がランダムに表示される仕組みだ。

 驚くべきことに、実験の結果、ネガティブな画像が表示される直前になると、被験者の脳波に顕著な活動のスパイク(急上昇)が見られたのだ。つまり、被験者の脳は、画像を見るよりも先に「何か不快なことが起こる」と予感し、反応していたのである。

 この実験はその後、何度も追試が行われ、統計的に有意な結果が一貫して得られている。さらに驚くべきことに、1995年には米中央情報局(CIA)も、過去に行っていた予知能力に関する研究データを機密解除。そのデータは、統計の専門家によって「信頼できる」と結論づけられていた。

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「量子もつれ」が解き明かす未来からの記憶

 統計データは、予知という現象の存在を強く示唆している。では、そのメカニズムは何なのか。ラディン博士は、その鍵が量子力学の世界にあると考えている。特に注目しているのが、「量子もつれ(エンタングルメント)」という現象だ。

 量子もつれとは、ペアになった2つの粒子が、どれだけ遠く離れていても、まるで繋がっているかのように同じ振る舞いをする不思議な現象で、アインシュタインはこれを「不気味な遠隔作用」と呼んだ。

 ラディン博士は、この理論を意識に応用する。「予知とは、あなたの現在の脳が、未来のあなた自身の脳と“量子もつれ”の関係にある状態なのではないか」と彼は説明する。つまり、未来で起こる出来事を経験した「未来の自分」から、時空を超えて情報が送られてくる。それが、現在を生きる私たちにとって「未来からの記憶」、すなわち虫の知らせやデジャヴとして感じられるというのだ。

 時間が直線的ではないのなら、私たちの意識が目に見えない扉を通って未来へアクセスすることも、決してあり得ない話ではない。予知能力、そのメカニズムをめぐる科学者たちの挑戦は、まだ始まったばかりである。

参考:Popular MechanicsCIA、ほか

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文=深森慎太郎

人体の神秘や宇宙の謎が好きなライター。未知の領域に踏み込むことで、日常の枠を超えた視点を提供することを目指す。

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