太陽が“消えた”日 ― 世界が暗闇に包まれた、歴史上“最も奇妙な8つの記録”

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 日食、山火事、火山の噴火――。現代の私たちにとって、真昼の空が暗くなる現象は、科学で説明できる、あるいは予測可能な出来事だ。しかし、過去の人々にとって、太陽が突然その光を失うことは、説明のつかない不吉な前兆であり、神々の怒りや世界の終わりの始まりを意味していた。

 過去に起きた日食の記録を辿ることで、多くの「暗黒の日」は説明がつくようになった。しかし、今なお科学では完全には解明できない、あるいは特に奇妙な出来事として歴史に刻まれた事例が存在する。ここでは、そんな中でも、特に不気味な8つの「暗黒の日」を紹介しよう。

デトロイトの「黒い雨」(1762年)

 1762年10月19日、アメリカのデトロイトに奇妙な闇が訪れた。商人のジェームズ・スターリングは、その日の太陽を「血のように赤く、普段の3倍以上の大きさだった」と手紙に記している。空は汚れた黄緑色に染まり、あまりの暗さに日中からロウソクを灯さなければならなかったという。

 そして何より奇妙だったのは、空から降ってきた「黒い雨」だ。スターリングが差し出した紙は、インクのように真っ黒に染まり、空気は硫黄のような悪臭に満ちていた。この現象はカナダでも報告され、フランス語で「煤の雨(pluie de suie)」と呼ばれた。

 この原因は、今なお謎に包まれている。火山噴火説、森林火災説、あるいは翌年に起きた先住民ポンティアックの反乱の前兆だと不吉に思う者もいたが、決定的な証拠は見つかっていない。

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ニューイングランドの「暗黒の日」(1780年)

 歴史上、最も有名な「暗黒の日」の一つが、1780年5月19日にニューイングランド一帯を襲った現象だ。その日、太陽はいつも通り昇ったが、間もなく空は厚い雲に覆われ、光が遮られた。当時ニュージャージーで独立戦争を戦っていたジョージ・ワシントンは、日記に「雲は暗く、同時に赤みがかった明るい光が混じり、明るくなったり暗くなったりを繰り返していた」と記している。

 マサチューセッツにいたジョン・アダムズの妻アビゲイルは、まるで皆既日食のようだったと語る。「11時までには、どの家でもロウソクが灯され、牛は牛舎に戻り、鳥はねぐらに帰り、カエルが鳴き始めました」と彼女は書いている。

 あまりの異常事態に、コネチカット州議会では休会が検討されたが、議員エイブラハム・ダベンポートはこれを一喝した。「審判の日が近いのか、そうでないのか。もしそうでないなら、休会の理由はない。もしそうなら、私は自分の義務を果たしているところを見られたい。だからロウソクを持ってきてもらいたい」

 この原因も長年謎だったが、近年の研究で、カナダで発生した大規模な森林火災の煙が原因であるという説が有力となっている。

バグダッドの暗転(1857年)

 1857年5月20日、イラクのバグダッドで外交官として勤務していたイギリス使節チャールズ・A・マレーは、不可解な闇に遭遇した。「星も月も見えない真夜中よりも強烈な暗闇」だったと彼は語る。漆黒の闇は短時間で終わり、その後「世界のどこでも見たことのない、赤く不気味な薄明かり」に変わったという。

 さらに奇妙なことに、その後、空から大量の赤い砂が降ってきた。砂嵐の一種である「シムーン」ではないかと推測されたが、マレーは何度もシムーンを経験しており、これは全くの別物だと否定している。

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オシュコシュの暗黒の日(1886年)

 1886年3月19日の午後3時頃、アメリカ・ウィスコンシン州オシュコシュの街が、突如として暗闇に包まれた。地元の新聞は「5分も経たないうちに太陽は覆い隠され、屋内は夜のように暗くなった」と報じている。

 目撃者によれば、西からやってきた「濃密な黒い雲か霧」が原因だったという。地上では感じられないほどの高高度をサイクロン性の風が吹いた結果ではないかと考えられたが、この奇妙な天気の明確な原因は未だに確認されていない。

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ブラック・サンデー(1935年)

 1930年代のアメリカ中西部、グレートプレーンズの住民は「ダストボウル」と呼ばれる砂嵐に慣れていた。しかし、1935年4月14日の嵐は、桁違いに深刻だった。後に「ブラック・サンデー」と呼ばれるこの嵐は、高さ3000メートル以上、時速160キロで移動する、30万トンの黒い砂塵の壁だった。

 フォーク歌手ウディ・ガスリーは、テキサスでこの黒いブリザードに遭遇し、「目の前の自分の手も見えず、部屋の誰の顔も見えなくなった」と回想している。彼はこの恐ろしい嵐について歌を作り、「黒いカーテンが街に下ろされたようだった/我々は審判の日だと思った、我々の運命だと思った」と歌った。あまりの恐怖に、赤ん坊を来たるべき恐怖から救うために殺そうと考えた女性もいたという。この嵐は、その後の土壌保全法の制定へと繋がった。

シベリアの暗黒(1938年)

 1938年9月18日、シベリアのヤマロ・ネネツ地方の住民は、後に「シベリアの暗黒」として知られることになる不可解な現象を経験した。その朝、雲は黄色がかった茶色から、次第に赤褐色へと変化。午前10時半には、空は完全に黒い雲に覆われ、すべての光が遮断された。

 さらに奇妙なことに、その地域は完全な「ラジオ・サイレンス」に陥り、一切の電波が通じなくなった。気象学者が空に照明弾を打ち上げたが、それはただ濃い雲の中に消えていったという。約1時間後、静寂と暗闇は徐々に晴れていったが、原因は今日まで不明である。

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ロンドンの大スモッグ(1952年)

 1952年の冬、ロンドンは史上最悪の大気汚染に見舞われた。高気圧によって工場や家庭から排出された煙が地上に閉じ込められ、緑がかった黄色の濃密な霧、通称「豆のスープ(pea-soup)」が街を覆ったのだ。

 12月5日から9日までの4日間、太陽の光は完全に遮断され、ハリケーン・ランプの光さえも通さない暗闇がロンドンを支配した。「まるで盲目になったようだった」と、ある葬儀屋の助手は後に語っている。この大スモッグによる死者は、当初4000人と報告されたが、近年の研究では心臓や呼吸器系の疾患により、約1万2000人が死亡したと推定されている。この悲劇は、英国における大気浄化法の制定を促した。

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大スモッグの最中のロンドン市街地 N T Stobbs, CC 表示-継承 2.0, リンクによる

ヤクーチアのブラックアウト(2018年)

 夏の間、太陽が20時間も沈まないシベリアのヤクーチア共和国(サハ共和国)で、2018年7月20日、不可解な現象が起きた。午前11時から午後2時までの約3時間、太陽が完全に姿を消したのだ。不吉な暗闇と共に、空気中にはザラザラとした黒い塵が漂っていたという。

 この原因は全く分かっていない。ある住民は「悪魔の仕業だ」と怯え、森林火災の煙だという説も出たが、気象当局者は「もし火事のスモッグなら、煙と焦げた匂いがするはずだ。我々の観測所ではそのようなものは記録されていない」と、その説を否定している。

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 森林火災の煙、火山の灰、そして産業が生んだ黒い霧――。科学の進歩は、歴史上の多くの「暗黒の日」に光を当ててきた。しかし、今なおそのベールを剥がすことのできない、原因不明の闇も確かに存在する。シベリアを包んだ静寂の暗黒、バグダッドに降った赤い砂。これらの出来事は、私たちが生きるこの世界が、まだ完全には理解できない、大いなる謎に満ちていることを静かに物語っている。次に空がその色を失うとき、私たちはその理由を知ることができるのだろうか。

参考:Mental Floss、ほか

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