「ホビット」は今も生きている? 絶滅したはずの“小人族”を目撃する島民たちの証言、伝説は実話だったのか

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 身長1メートルの“ホビット”がインドネシアの島の山中を今も歩き回っているのか――。5万年前に絶滅したとされるホモ・フローレシエンシスが今も生き永らえている可能性はあるのだろうか。

■フローレス島に“ホビット”がいる!?

 2000年代初頭、インドネシアのフローレス島でフィールドワークを行っていた人類学者グレゴリー・フォース氏は、島の山岳地帯であるリオ地区に住む地元住民と頻繁に話をしていたのだが、彼らは背が低く毛深い、一種の“猿人”とも言える小さな人型動物を時折見かけることがあると話していたのだ。

 2004年、古人類学者グループが「Nature」誌上で、フローレス島の人里離れた山岳洞窟で人類の進化系統樹の新たな連鎖を発見したと発表した。前年の2003年に発見されたこの種族、ホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)は直立歩行し、身長は1メートル前後、小柄な体格に不釣り合いの大きな足を持つ初期人類であり、研究者たちは小説『指輪物語』に登場する小柄な人々にちなんで、この個体の愛称を「ホビット」と命名した。

 フローレス島の住民たちが目撃している“猿人”とはこのホビットのことなのか。

 研究者たちは、ヒト属がフローレス島に到達したのは約100万年前だと推測しており、数千年の間に彼らは低身長症を発症し、島でホビットとして暮らし、最終的に約5万年前に絶滅したと考えている。

 しかしフォース氏はホビットが、この孤立した地域で過去5万年間生き延びていた可能性があると考えている。2022年にはフローレス島民から学んだことをまとめた著書『Between Ape and Human: An Anthropologist on the Trail of a Hidden Hominoid(類人猿と人類の間:隠されたホミノイドの足跡を辿る人類学者)』を出版した。

 フォース氏はホビットが今も生きていると断言しているわけではないが、少なくとも生きている可能性を否定できないと考えている。

 ヒト属におけるこのような発見は「驚くべきものとなるでしょう。現在の通説に反するだけでなく、現在のヒト科進化論を覆し、『人間』、あるいは『人間ではない』ことの意味について疑問を投げかけるでしょう」とフォース氏は2023年2月の「The Debrief」のインタビューで語っている。

 しかしスミソニアン協会人類起源イニシアチブのマシュー・トチェリ氏は、フローレス島の山岳地帯に住む人々が大規模な類人猿個体群の痕跡を発見していないことから“猿人”の存在に疑問を呈している。

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 個体群が生存し、繁殖するには、何世代にもわたって何千頭もの健康な個体の群れが必要であり、種として存続しているならもっと普通に目撃されているはずであるという。

 彼はこの物語は米のビッグフットやサスカッチに関する物語に似ているのではないかと考えている。それらは長い間語り継がれ、文化の一部となり、精神に深く根付いている。もしかしたら、島民はほかの霊長類を見て、それを猿人だと勘違いしているのかもしれないとトチェリ氏は指摘する。

 一方、フォース氏は物理的標本以外の証拠も認め、地元民の目撃証言を有力な説と考えている。ホビット族の現存可能性は否定されてはいないが、もし発見されれば人類進化論に革命をもたらすことになる。古人類学は近年、ホモ・ナレディやデニソワ人の発見など急速に進展しており、かつての人類が現在も存在する可能性は科学的に追及する価値があるということだ。

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ホモ・フローレシエンシスの顔の復元図 By Cicero Moraes et alii – http://arc-team-open-research.blogspot.it/2015/08/homo-floresiensis.html, CC BY 4.0, Link

 いずれにせよホビットに関する多くの興味深い研究課題は研究者たちを魅了している。たとえば彼らはどのように生き延びたのか、何を食べていたのか、どれほど強かったのか? これらの疑問に答えることで、フローレス島のホビットのより詳細な姿が浮かび上がり、人類のルーツへの理解が深まることが期待されている。

 ホビット(ホモ・フローレシエンシス)の発見により、人類進化の理解が大きく変わったのは事実である。従来は進化を直線的にとらえていたが、今では同時代の異なる種が交雑していたことが判明している。ホビットは複数の祖先の特徴を持ち、ホモ・エレクトスやホモ・ハビリスから進化した可能性があるという。約4万5000年前に現生人類と同時にフローレス島に存在した証拠があり、両者の関係や絶滅の原因解明が今後の研究課題となっている。

 ホビットが今も生き永らえているとすれば実に夢のあるストーリーとなることは間違いない。ぜひともその可能性がゼロではないままにしておいて欲しいものだ。

参考:「Popular Mechanics」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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