金縛り時に現れる恐怖の存在「ハットマン」の正体は、悪魔か、それとも脳が見せる幻覚か?

就寝中に何らかの原因で薄っすらと目覚めることがあるかもしれないが、誰もいるはずのない部屋で近くに誰かがいれば驚くほかない。その不気味な人物は往々にしてトレンチコートに身を包みつばの広い帽子をかぶった“ハットマン”であるという――。
■真夜中の寝室に立つ謎の男“ハットマン”とは?
部屋の隅に立って就寝中の自分を常に見守っているトレンチコート姿に帽子をかぶった謎の男、“ハットマン”とは何者なのか――。
オーストラリアのタスマニア島を拠点とする夢分析家であり神経生物学者のジェーン・テレサ・アンダーソン氏は、ハットマンは「謎めいて特徴のない男」として語られることが多いと語る。
「その人物は全体的に暗く影がかかっており、特徴は判別できません」とアンダーソン氏は英紙「Daily Mail」に語る。
「それは、人の最も深く、最も暗く、最も影のある恐怖を表しているのかもしれません」(アンダーソン氏)
ハットマンは、目覚めているときや眠りに落ちるときに意識はあるが動けない状態である金縛り(睡眠麻痺)のときによく目撃されるという。
「金縛りはほんの数秒しか続きませんが、その恐ろしい体験は非常にリアルに感じられるので、絶望感を覚えます」(アンダーソン氏)
金縛りを体験中には、幽霊、グレムリン、死神、そしてハットマンなど、恐ろしい人物が我が身を押さえつけているという苦痛を伴う幻覚を見ることが多いともいわれている。
「金縛りの間に人々が見る邪悪な存在は、多くの場合、その人々の文化、彼らが何を見ると期待しているかによって決まります」(アンダーソン氏)
半睡半覚の時に出現する存在として、古代の神話やキリスト教の伝承に登場する夢の中に現れて性交を行うとされる男性型の夢魔、インキュバス(Incubus)や、その女性版であるサキュバス(Succubus)が有名だが、英アベリストウィス大学の睡眠障害研究者びアリス・バーノン博士は、金縛りの間に「大衆文化が私たちの見るものに影響を及ぼす」と説明している。
「怖い話を聞かされたり、ホラー映画を見たりするときは、ベッドに横になってそのことを考えながら、怪物に遭遇しないことを願うのです。ですから、私たちが金縛りに遭うと、その恐ろしい状況を説明するために、私たちの脳が最初に思いつくのが、この恐ろしい存在です」(バーノン博士)
文化史の約400年間のスパンで数百の金縛りの逸話を調べてきたバーノン博士は、歴史を通じて金縛り時に出現する悪魔の変遷を追うことができると考えている。
「人々が最初に魔女や妖精、インキュバスを目にしたのは、それが近世初期の民間伝承の重要な部分だったからです。その後のビクトリア朝時代には、死者を悼む気持ちや葬儀の文化、幽霊やホラーの話が広まったことで、人々は吸血鬼や幽霊、骸骨を見るようになりました」(バーノン博士)
恐怖に伴うビジュアルを我々は実は恣意的に見ているのかもしれない。
「今では、ホラー映画のようなモンスターや悪役の目撃情報が頻繁に報告され、また、金縛りを宇宙人による誘拐と解釈したり、魔女の代わりに宇宙人を目撃したりする人もいます」(バーノン博士)

興味深いことにハットマンが目撃されるのは、就寝中だけではないという。
テキサス州の地元メディア「San Antonio Current」紙によると、テキサス州在住のステイシー・アレホスさんは少女の頃、自宅の部屋の窓の外でハットマンを目撃したと語っている。
「ステイシーは目が暗闇に慣れてくると、庭を囲む白い柵の後ろに立っている人型の人物の輪郭をはっきりと見分けることができた」(記事より)
ステイシーが恐怖に包まれて見守っていると、その生き物は伸ばした腕をフェンスの一番上の支柱に置いたまま、奇妙な横向きの体勢でゆっくり動き始めたという。
その存在の足元で乾いた落ち葉が踏まれる音が聞こえ、ステイシーはこの光景が夢でも想像でもないことを確信したのだった。
「当然ながら恐怖を感じた少女は、シーツの下に潜り込み、朝まで恐怖で震えていました」 (記事より)
ハーバード大学心理学部の神経科学者、バランド・ジャラル博士によると我々の脳は、外敵を素早く見つけるために実際には存在しないものでも存在しているかのように感知できるように進化してきたという。
「人間は『誰もいない』よりも『誰かいる』と感知するほうに間違いを犯すように本能的にできている。これは適応的生存優位性(adaptive survival advantage)です」(ジャラル博士)
壁のシミや雲の模様など、本来は顔ではない無生物が顔に見えてしまう心理現象として「顔パレイドリア」があるが、我々は見慣れないものを見たり異変を感じたりすると、まずは近くに誰かがいると思い込むのかもしれない。とはいえ金縛りの“絶体絶命”の状況では心の底で真に恐れているものが見えてきても不思議はなさそうだ。
参考:「Daily Mail」ほか
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2024.10.02 20:00心霊金縛り時に現れる恐怖の存在「ハットマン」の正体は、悪魔か、それとも脳が見せる幻覚か?のページです。金縛り、幻覚、睡眠麻痺、インキュバスなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで