AIが84年前の謎を解明か ― あの衝撃的な“ホロコースト虐殺写真”の犯人がついに判明？

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　80年以上の長きにわたり、歴史家を悩ませてきた一枚の衝撃的な写真がある。死体が積み重なる穴の前で、ユダヤ人男性がひざまずき、その後頭部に銃口を向けるナチス兵士。その冷酷な殺人者の正体は、これまで厚い謎のベールに包まれてきた。しかし今、AIという最新技術が、この歴史の闇に光を当てようとしている。

84年間、世界を震撼させた一枚の写真

　問題の写真は、1941年に現在のウクライナで撮影されたものだ。そこには、ホロコーストの残虐性を凝縮したかのような光景が写し出されている。

　この一枚は、殺害者と被害者が直接対峙する「手作業の殺人」の現場を捉えており、歴史家ユルゲン・マッタウス氏が「アウシュヴィッツの門の写真と同じくらい重要だ」と語るほど、歴史的に価値のある資料とされてきた。

　しかし、写真に写る眼鏡をかけた兵士が誰なのか、長年特定には至らなかった。一時「ヴィーンヌィツャの最後のユダヤ人」という誤ったタイトルで世界に知られたこの写真は、歴史のミステリーとして多くの議論を呼んできたのだ。

歴史家の執念とAIが導いた「異常な一致」

　この謎に終止符を打つべく、ドイツの歴史家ユルゲン・マッタウス氏は長年、粘り強い調査を続けてきた。彼はまず、この虐殺が1941年7月28日にベルディチェフの城塞で、ナチス親衛隊（SS）の特殊部隊「アインザッツグルッペンC」によって実行されたものであることを突き止めた。

　この研究成果が学術誌に掲載されると、事態は劇的に動く。あるドイツ人家族がマッタウス氏に連絡を取り、「写真の兵士は、我々の義理の親族かもしれない」と申し出たのだ。

　その人物の名は、ヤコブス・オンネン。1906年生まれで、フランス語、英語、体育を教える教師だったという。マッタウス氏は、家族から提供されたオンネンの生前の写真と、問題の虐殺写真の兵士をAI顔認証技術で照合。その結果、技術専門家が「異常に高い一致率」と評するほどの驚くべき結果が出たのである。

殺人者の素顔―語学を愛した教師はなぜ虐殺者に？

　ヤコブス・オンネンとは、一体どんな人物だったのか。彼は教養ある家庭に生まれ、若い頃は旅行や語学の勉強を楽しんでいたという。その経歴は、冷酷な殺人者のイメージとは程遠い。しかし彼は、ヒトラーが政権を握る以前にナチ党に入党していた。

　マッタウス氏は、写真の中で彼がとっているポーズについて、「誰かに感銘を与えるためのものだろう」と推測する。なぜ、一介の教師がこのような残虐行為に加担したのか。その動機は今となっては謎のままだ。

　オンネンが所属していたアインザッツグルッペンは、占領したソ連領内で「ユダヤ人とパルチザンの掃討」を任務とする移動虐殺部隊だった。彼らの間では、このような虐殺への参加は当然のことと見なされ、昇進の材料にさえならなかったという。オンネン自身も、特に昇進することなく、1943年に戦闘で命を落とした。

　AIによって暴かれつつある84年前の真実。それは、歴史の闇に葬られた一個人の物語であると同時に、ごく普通の人間が、いかにして残虐なシステムの一部となり得たのかを我々に突きつける、痛烈な教訓でもあるのだ。

参考：Daily Star、ほか

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