“テレパシー”が現実に? 「思考で会話する」デバイスが発表される

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 SFの世界で描かれてきた「テレパシー」が、ついに現実のものとなる日が来るのかもしれない。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたスタートアップ企業「AlterEgo」が発表したウェアラブルデバイスは、声を出さずに「思考の速さで」コミュニケーションできると謳い、世界に衝撃を与えている。この技術は、私たちの生活を根底から変える可能性を秘める一方、プライバシーに関する新たな懸念も生み出している。

思考は読まれない?「サイレントスピーチ」の仕組み

「テレパシー」と聞くと、頭の中の考えがすべて読み取られてしまうのではないか、と不安に思う人も多いだろう。しかし、AlterEgoが開発したデバイスは、イーロン・マスク氏が率いるNeuralinkのような脳にチップを埋め込む「侵襲型」ではなく、顔の側面に装着する「非侵襲型」のブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)だ。

 このデバイスの核心は、MITで開発された「Silent Sense」という独自技術にある。これは、頭の中で漠然と考えていること(プライベートな思考)を読み取るのではなく、ユーザーが「話そう」と意識的に意図した言葉、すなわち「サイレントスピーチ(声に出さない発話)」に伴う微細な神経筋信号を検出する仕組みだ。

 実際に声を出したり、口を動かしたり、あるいは全く動かさずに話そうと意図するだけでも、その言葉をAIが認識し、テキストや音声に変換する。AlterEgo社は、「AIが人間の心の延長線上にある」プラットフォームだと説明しており、意図しない思考が漏洩するリスクを最小限に抑えている点が大きな特徴だ。

障がい者支援から日常まで―広がる無限の可能性

 この「ほぼテレパシー」技術がもたらす恩恵は計り知れない。最も期待されているのが、アクセシビリティ(利用しやすさ)の向上だ。ALS(筋萎縮性側索硬化症)やMS(多発性硬化症)、失読症、あるいは脳卒中後遺症などにより、話したり書いたりすることが困難な人々にとって、このデバイスは画期的なコミュニケーション手段となり得る。

 もちろん、応用範囲はそれだけにとどまらない。日常生活では、思考の速さで文字を入力したり、ハンズフリーでデバイスを操作したり、公共の場で静かにインターネット検索をしたり、プライベートな会話を交わしたりすることが可能になる。

 将来的には、職場での新しい対話形式を生み出し、人間の認知能力そのものを拡張するツールになるかもしれない。特に、非発話性の自閉症や学習障がいを持つ人々の社会参加を促し、人間とAIがより高度に協働する未来への道を開く可能性も秘めている。

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プライバシーと格差―「テレパシー社会」がもたらす新たなリスク

 しかし、この革新的な技術には光だけでなく影も存在する。神経科学者のジュリア・モスブリッジ氏は、「意識的な意図と無意識の思考の境界線は人によって異なる」と指摘し、「愛する人の皮肉な考えが意図せず聞こえてしまうような、厄介な事態」が起こりうると警告する。

 さらに深刻なのが、セキュリティと社会格差の問題だ。もしこのデバイスがハッキングされれば、プライベートな会話が盗聴される危険性がある。また、経済的な問題も無視できない。高度な暗号化が施された安全なモデルは富裕層しか手に入れられず、低所得層はセキュリティの脆弱な安価なデバイスの使用を強いられるかもしれない。そうなれば、経済格差が「思考のプライバシー格差」に直結しかねないのだ。

 AlterEgoのようなBCI技術が、人々を力づけるツールとなるか、それとも社会の分断を深める源となるか。その未来は、技術開発者、政策立案者、そして私たち消費者が、これから直面する倫理的・社会的な課題にどう向き合っていくかにかかっている。SFが現実になった今、私たちはその使い方を真剣に考える岐路に立たされているのかもしれない。

参考:The Debrief、ほか

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