ChatGPTで学ぶと“思考力が低下する”?「AI学習」はGoogle検索より知識が“浅く”なるという、不都合な真実

質問を投げかければ、洗練された答えが即座に返ってくる。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、まるで“努力いらずの学習ツール”のように見える。しかし、その“楽さ”には、大きな代償が伴うのかもしれない。
ペンシルベニア大学の研究チームが発表した衝撃的な研究によれば、AIに要約された情報で学ぶ人々は、旧来のGoogle検索で自ら学ぶ人々と比べて、 そのテーマに関する知識が“浅く”なる傾向があるというのだ。
これは、AIが私たちの学習能力を静かに蝕んでいるという、不都合な真実なのだろうか。
1万人超の実験で判明した“浅い知識”
研究チームは、1万人以上の参加者を対象に、7つの異なる実験を行った。その基本的な内容はこうだ。参加者を2つのグループに分け、「家庭菜園の始め方」といった特定のテーマについて学んでもらう。
・グループA: ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を使用する。
・グループB: 従来のGoogle検索を使用し、自らリンクを辿って情報を集める。
その後、彼らが学んだ知識を元に、「友人にアドバイスを書く」という課題を与えた。
結果は一貫していた。AIで学んだ人々は、Google検索で学んだ人々と比べて、より短く、事実に基づかない、ありきたりなアドバイスしか書けなかったのだ。彼ら自身も「あまり学べなかった」と感じており、そのアドバイスを読んだ第三者からも「情報量が少なく、役に立たない」と評価された。
たとえ、両グループに与える情報の“事実”を完全に同一にしたり、GoogleのAI要約機能を使ったりしても、結果は変わらなかった。AIが生成した「要約された答え」で学ぶことは、自ら情報を収集し、解釈し、統合するプロセスを経る学習と比べて、どうしても知識が浅くなってしまうのだ。

なぜAI学習は“浅く”なるのか?―“摩擦”の重要性
なぜ、このような差が生まれるのか。研究者たちは、その鍵が「摩擦(friction)」にあると指摘する。
スキル習得の最も基本的な原則の一つは、「学習対象の素材に積極的に関わることで、最もよく学べる」というものだ。
Google検索で学ぶ時、私たちは様々な“摩擦”に直面する。無数のウェブリンクを吟味し、玉石混交の情報源を読み解き、それらを自らの頭で解釈し、統合しなければならない。
このプロセスは、確かにAIに答えを聞くよりも骨が折れる。しかし、この“苦労”こそが、テーマに対するより深く、より独創的な心的表現(メンタルモデル)を脳内に構築させるのだ。
一方で、ChatGPTのようなAIは、この面倒なプロセスをすべて代行してくれる。その結果、学習は「能動的」なプロセスから「受動的」なプロセスへと変質してしまう。楽をすればするほど、私たちの学びは浅くなるのだ。

AIを“賢く”使うために―これからの学習のあり方
もちろん、この研究はAIの使用を完全に否定するものではない。AIが多くの場面で計り知れない利益をもたらすことは、紛れもない事実だ。
重要なのは、AIをより賢く、より戦略的に使うことだと研究者は語る。
・事実に関する簡単な答えが必要な時 → 積極的にAIを使うべき。
・ある分野で深く、応用可能な知識を身につけたい時 → AIの要約だけに頼るのは危険。
研究チームは、AIの要約と同時に参照元のウェブリンクを提示する実験も行ったが、一度要約を見てしまった参加者は、元の情報源を深く掘り下げる意欲を失ってしまったという。
楽な道は、必ずしも正しい道ではない。AIという強力なツールを手に入れた私たちは、自ら「学ぶ」とはどういうことなのかを、改めて問い直す必要があるのかもしれない。
参考:The Conversation、ほか
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2024.10.02 20:00心霊ChatGPTで学ぶと“思考力が低下する”?「AI学習」はGoogle検索より知識が“浅く”なるという、不都合な真実のページです。思考、検索、AI、ChatGPTなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで