親切心が約2倍に急増!地下鉄に「バットマン」が現れると、なぜ人は席を譲るようになるのか?

地下鉄で、ある朝突然「闇の騎士」が現れたらどうなるだろうか。
最新の心理学研究によると、コスチュームを身にまとったバットマンが車両に乗り込むだけで、乗客たちの行動に劇的な変化が起きることがわかった。なんと、人々は普段よりもはるかに他人に優しくなり、席を譲る確率が跳ね上がったのだ。
今回は、イタリアの研究チームが明らかにした、ユニークかつ興味深いバットマン効果について紹介しよう。
地下鉄にバットマン? 驚きの心理実験と結果
ミラノ・カトリック大学の研究チームは、ミラノの地下鉄で138回にわたるフィールド実験を行った。実験の内容はシンプルだ。妊婦(のふりをした実験者)が混雑した電車に乗り込んだ際、乗客が席を譲るかどうかを観察するというものである。
比較対象として、以下の2つのシナリオが用意された。
通常時: 妊婦だけが乗り込む。
バットマンあり: 妊婦が乗ると同時に、別のドアからバットマンのコスプレをした男性が乗り込み、3メートルほど離れた場所に立つ。
その結果は驚くべきものだった。バットマンがいない時、妊婦に席を譲った乗客の割合は37.66%だったのに対し、バットマンがいる車両では67.21%にまで急上昇したのだ。スーパーヒーローが近くにいるだけで、人々の親切心(向社会的行動)は2倍近くに膨れ上がったことになる。

「オートパイロット」を解除する仕掛け
なぜバットマンがいるだけで、人々は親切になるのだろうか。研究を主導したフランチェスコ・パグニーニ教授は、これを日常のルーチンが壊されることによる効果だと説明している。
私たちは普段、通勤や移動の際、無意識のうちに「オートパイロット(自動操縦)」モードで行動している。周囲の状況に深く注意を払わず、自分の世界に没入している状態だ。しかし、バットマンのような予期せぬ出来事に遭遇すると、この自動モードが強制的に解除される。
日常の風景に異物(バットマン)が混じることで、人々はハッとして「今、ここ」に意識を向けるようになる。研究チームはこれを一種の「非自発的なマインドフルネス」と呼んでおり、周囲への注意力が高まることで、困っている妊婦の存在にも気づきやすくなるのだと分析している。
気づいていなくても心は反応する?
さらに興味深いのは、席を譲った人の約半数(44%)が「バットマンがいたことに気づかなかった」と回答している点だ。
これは、バットマンという「正義の味方」を見て道徳心が刺激された(プライミング効果)という単純な理由だけでは説明がつかないことを示唆している。たとえ視界の端でしか捉えていなくても、あるいは周囲の空気がわずかに変わっただけでも、脳は環境の変化を感じ取り、周囲への警戒心や注意力を高めるのかもしれない。
研究チームは、誰か一人が変化に気づいて顔を上げれば、その行動が波紋のように周囲へ伝播し、集団全体の注意力を底上げする可能性もあると指摘している。

街中に「予期せぬ出来事」を
この研究結果は、単なるトリビア以上の可能性を秘めている。もし、バットマンのコスプレでなくとも、日常の中にちょっとした驚きや「予期せぬ出来事」を意図的に作り出すことができれば、人々の親切心を引き出せるかもしれないからだ。
パブリックアートやパフォーマンス、あるいは遊び心のある都市デザインによって、人々の「オートパイロット」を一時的に中断させる。そうすることで、無関心になりがちな都市生活の中に、他者への思いやりや繋がりの瞬間を生み出せるかもしれない。
スーパーヒーローの格好をしなくとも、日常のちょっとしたスパイスが、誰かを救うきっかけになるのかもしれない。
参考:ZME Science、Nature 論文、ほか
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2024.10.02 20:00心霊親切心が約2倍に急増!地下鉄に「バットマン」が現れると、なぜ人は席を譲るようになるのか?のページです。実験、地下鉄、バットマンなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで