「私の父がD.B.クーパーかもしれない」息子が語る、54年前の完全犯罪とFBIへの復讐劇

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　アメリカ史上唯一の未解決ハイジャック事件として知られる「D.B.クーパー事件」。FBIや世界中のアマチュア探偵たちが何世代にもわたって謎を追い続けてきたが、ここに来て新たな証言が注目を集めている。ある男性が、自身の父親こそが、あの悪名高きハイジャック犯だった可能性が「極めて高い」と語ったのだ。

事件の概要と深まる謎

　1971年11月24日、「ダン・クーパー」と名乗る男がポートランド発シアトル行きの飛行機に搭乗した。離陸後、彼は客室乗務員に爆弾を持っていると脅し、身代金20万ドル（現在の価値で約1億5000万円相当）とパラシュート4つを要求。シアトルで乗客を解放した後、再び離陸させ、飛行中にパラシュートで脱出するという大胆な犯行に及んだ。

　それから54年、クーパーの行方は知れず、FBIも2016年に捜査を正式に打ち切っている。しかし、事件への関心は冷めることなく、キース・バグスビー氏の父親、ジョー・ラキッチ氏こそが真犯人ではないかという新説が浮上している。

父の動機は「FBIへの復讐」だったのか

　この説を提唱したのは、発明家でありパイロットの資格も持つビル・ロリンズ氏だ。彼は2017年の著書で、クーパーの正体を解く鍵は犯人の「恨み」にあると指摘している。犯行当時、クーパーは乗務員に対し、航空会社ではなく個人的な恨みがあると語っていたという。

　ロリンズ氏によれば、ジョー・ラキッチ氏の娘スーザンは、事件の数週間前に起きた別のハイジャック事件で、夫に殺害されていた。ラキッチ氏は、FBIの対応の不手際が娘の死を招いたと考え、復讐心から犯行に及んだのではないかと推測されている。

　さらに、ラキッチ氏はクーパーの身体的特徴と一致し、軍事訓練を受けていたためパラシュート降下も可能だったとされる。息子のキース氏は、当初は懐疑的だったものの、現在は「状況証拠を考えれば極めて可能性が高い」と認め、「もし父が犯人だったなら、家族にも完璧に隠し通したということだ」と語っている。

ネクタイに残された決定的証拠

　ロリンズ氏の主張を裏付けるもう一つの有力な証拠が、クーパーが機内に残したクリップ式のネクタイだ。市民探偵グループ「Citizen Sleuths」による科学分析の結果、ネクタイからはチタンやステンレス、パラジウムといった金属粒子が検出された。

　これらは金属加工工場で働く人物特有のものであり、実際にラキッチ氏が勤務していた「ナッシュビル・エレクトロニクス」でも使用されていた物質と一致するという。この物的証拠は、ラキッチ氏とクーパーを結びつける強力な手掛かりと見なされている。

依然として割れる見解

　一方で、この説に異論を唱える声も少なくない。2006年から2010年まで事件を担当した元FBI捜査官ラリー・カー氏は、クーパーは高度な訓練を受けておらず、パラシュート降下で死亡した可能性が高いと考えている。「容疑者を決めてから動機を後付けするのは、捜査の落とし穴だ」と警鐘を鳴らす。

　また、D.B.クーパー関連のイベントを主催するエリック・ウリス氏も、過去に別の「犯人の子供」を名乗る人々の主張を退けており、真相の解明には依然として慎重な姿勢を見せている。半世紀を経てなお人々を惹きつけるミステリー、その真実が明らかになる日は来るのだろうか。

参考：LADbible、ほか

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