80年間、家族を呪う“3歳の弟”失踪事件 ―「振り返ったら消えていた」兄が死ぬまで抱えた罪悪感と最後の希望

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 映画館からの帰り道、兄妹は「リーダーの真似をする」という無邪気な遊びに興じていた。先頭を歩く兄の動きを真似ながら、3人は家路をたどっていた。しかし1946年4月30日の夕暮れ、その幸せな時間は一瞬にして悪夢に変わった。先頭を歩いていた9歳の兄ビルが振り返った時、そこにいるはずの3歳の弟、ピーター・グリーンウッドの姿は、どこにもなかった。

 彼は、まるで神隠しにでも遭ったかのように、忽然と姿を消した。それから80年近くの時が流れた今も、ピーターは見つかっていない。この事件は、残された家族の心に、決して癒えることのない深い傷と重い十字架を刻みつけた。

生涯をかけて弟を探し続けた兄の“罪悪感”

 ピーターがいなくなったあの日から、兄ビルの人生は一変した。「一番年上の自分が弟を守れなかった」。その計り知れない罪悪感と後悔は、彼を生涯にわたって苦しめ続けた。

 2023年、ビルは86歳でこの世を去った。弟の行方も、失踪の真相も、何も知らないまま。

「祖父は、自分が兄として責任を感じ、とてつもない罪悪感を抱えていました。彼がそのトラウマを乗り越えることは、生涯ありませんでした」。そう語るのは、ビルの孫娘であるキジー・エリオットさん(36歳)だ。

 彼女は、祖父の死をきっかけに、この80年前の謎を解き明かすための「最後の挑戦」を決意した。「祖父は、ピーターが忘れられないよう、何が起きたのかを知ろうと決して諦めませんでした。その遺志を継ぐことが、私にできる唯一のことなのです」

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失踪から半年後、母は29歳で衰弱死。そして消えた“捜査資料”

 ピーターの失踪は、家族を崩壊へと導いた。息子の帰りを待ち続けた母マリオンは、失踪からわずか半年後、悲しみに打ちひしがれ、29歳という若さでこの世を去った。

 当時の新聞は、ピーターが海で溺れた可能性を示唆した。しかし、兄ビルはそれを頑なに信じなかった。「祖父は、ピーターが溺死したとは全く考えていませんでした。もしそうなら、捜査は海に集中したはずだからです」とキジーさんは語る。

 しかし、真相を追うビルの前には、次々と壁が立ちはだかった。9歳の時に警察で行った自身の証言記録を含め、事件に関する公式な捜査資料を探し求めたが、1990年代には「すべてのファイルは別の場所に移管され、おそらく破棄された」と告げられてしまう。

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最後の希望―コールドケース・チームと“匿名のメモ”

 すべてが闇に葬られたかに思われた。しかし、キジーさんの新たな呼びかけは、事態を少しずつ動かし始めている。

 地元の警察の未解決事件(コールドケース)捜査班は、「広大なアーカイブの中から何か見つけ出せるかもしれない」と、再調査に協力的な姿勢を見せているという。

 さらに謎は残る。2002年、失踪から半世紀以上が経った頃、ビルの元に一通の匿名のメモが届いた。「少年が防波堤から水に飛び込むのを見た人がいる」と書かれていたが、差出人が名乗り出ることは二度となかった。

 誰が、何のためにこのメモを送ったのか。それは、事件の真相を知る人物からの、罪の告白だったのだろうか。

 キジーさんは今、祖父が残した書類を整理し、SNSなどを通じて広く情報提供を呼びかけている。「祖父が生きていたら、この支援の輪に圧倒されたことでしょう。彼が子供の頃に行った警察での証言を見つけ出し、その瞬間に彼が何を語ったのかを理解したいのです」

 80年の時を経て、孫娘に託された“最後の希望”。止まっていた時計の針が、今、再び動き出そうとしている。

参考:Mirror、ほか

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