南極で“蒸発”した研究者… 氷上で“突然消えた足跡”の謎。エイリアンか、ナチスか… 半世紀以上も解けない失踪事件の闇

画像は「Infinity Explorers」より

 若き研究者はどこへ消えたのか――。南極基地で長期研究ミッションに参加していた研究者が一人で外に出て行ったが最後、完全に姿を消してしまったのだ。

■南極で謎の失踪を遂げた研究者

 当時26歳のカール・ディッシュはアメリカ国立標準局の電離層物理学者で、1965年5月に彼は南極のバード基地での長期研究ミッションに参加した。

 基地での研究生活がはじまると、どういうわけかディッシュの情緒が不安定になり、同僚とのコミュニケーションが困難になったといわれている。

 ディッシュの行動はますます奇妙になっていき、基地内をうろつき、独り言を呟き、不可解な行動が見られるようになった。同僚たちが訳を聞こうと試みたにもかかわらず、ディッシュは聞く耳を持たず、理解不能な言動を続けていたという。いったい何があったのか。

画像は「Infinity Explorers」より

 ディッシュは基地から1.6キロメートル離れた場所にある無線ブースでよく1人で作業をしていたのだが、5月8日午前9時15分、気温マイナス42度の極寒の中、彼は無線ブースを出て基地に向かったまま帰らぬ人となった。

 ディッシュが午前10時までに基地に現れなかったため、同僚たちは捜索隊を編成して周辺の捜索を開始した。基地とブースの間には、悪天候での移動中でも迷子にならないようにロープが張られており、同僚たちはロープに沿ってディッシュの足取りを追った。

 午前11時30分、彼らはロープを逸れて進む人間の足跡を発見する。足跡は迷子になった者の足取りには見えず、意図的に特定方向へ向かっているもののように見えた。

 同僚たちはこの足跡をたどり、約6.4キロメートルにわたって追跡したところ、足跡は突然消えた。きわめて奇妙なことであり、この場所から空に飛び立ったかのようでもあった。

 その後の複数回の大規模捜索活動にもかかわらず、ディッシュの遺体も持ち物も発見されないまま、5月14日までに約100平方キロメートルが捜索された。

 ディッシュはロープに沿った通常のルートを外れてどこへ行こうとしていたのか。なぜ彼の足跡は途中で途切れ、跡形もなく消えているのか。

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 捕食動物による襲撃の可能性は即座に排除された。ホッキョクグマは南極にはおらず、人を襲う可能性のある動物などは生息していない。沿岸部のペンギンの天敵はトウゾクカモメ、シャチ、アシカのみである。

 数週間後、カール・ディッシュの死亡が正式に宣告されたが、事件は何一つ解決していない謎のままだ。

 その後も大規模な捜索活動が開始され、地上はもちろん上空からの捜索、リモートセンシング技術などの最先端技術を駆使した調査が行われたが、何一つ痕跡は発見されていない。

 失踪の原因についてはさまざまな仮説が登場している。

 道に迷ったり氷河の割れ目(クレバス)に落ちたという説から、精神的衰弱による自殺説、宇宙人ナチスによる誘拐説、ソ連のスパイ説まで存在する。

 最も考えられる説の一つは、ディッシュがバード基地滞在中に何らかの精神疾患または精神崩壊を患っていた可能性である。失踪に至るまでの彼の不可解な言動を考えると、混乱状態または見当識障害の状態で厳寒の荒野を彷徨っていたのではないかと多くが考えているようだ。

 またより想像力を働かせた説としては、ディッシュの失踪はバード基地での研究と関連している可能性である。研究中に予期せぬ、あるいは画期的な発見があり、それが失踪につながったのではないかと考える者もいる。

 また捜索中に異常な光や奇妙な音が報告されたことも謎を深めている。

 ディッシュの失踪は科学界に大きな影響を与え、極限環境での研究の危険性やメンタルヘルス支援の重要性が議論され、遠隔地での研究者の安全対策が見直されるきっかけとなった。彼の友人や家族にとっては実にショッキングな出来事であり、真相解明への探求は今も続いている。

参考:「Infinity Explorers」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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