植物の“悲鳴”を聞いて虫が産卵を回避していた… 最新研究が暴いた自然界の意外な対話

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「植物に耳はないが、彼らは確かにお喋りをしている」――。

 そんな風に聞かされると、童話やファンタジーの世界の話かと思うかもしれない。だが、最新の科学はその「お喋り」が、我々の想像を遥かに超えるほど具体的で、しかも周囲の昆虫たちに筒抜けであることを証明してしまったというのだ。

 イスラエルのテルアビブ大学が発表した画期的な研究によると、昆虫(特にガの一種)は産卵場所を決める際、植物が発する「超音波のクリック音」を聴き分け、その健康状態を判断しているという。

 静かな森や庭が、実は「悲鳴」や「警告」で溢れかえる騒がしい場所だったとは、想像してみると驚きを通り越して少し不気味ですらある。

植物が発する「喉の渇き」の悲鳴

 植物はストレスを感じると、空気中に超音波を発することがこれまでの研究で判明していた。例えば、水不足で乾燥に喘いでいるとき、植物は人間には聞こえない高周波(20〜60kHz)のクリック音を放つ。

 これまでこの音は、単なる物理現象の副産物に過ぎないと考えられてきた。しかし、テルアビブ大学のヨッシ・ヨベル教授らは、「この音を聴き、行動に利用している者がいるのではないか?」という仮説を立てた。

 そこで白羽の矢が立ったのが、エジプトヨトウというガだ。このガは、植物のクリック音と同じ周波数帯を捉えることができる「耳(鼓膜器官)」を持っている。

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By Nir Ofir – Own work, CC BY-SA 2.5, Link

ガは「崩壊寸前の欠陥物件」を避けている?

 研究チームは、産卵を控えたメスのガを使って一連の実験を行った。

 まず、植物がない環境でスピーカーから「ストレスを感じた植物の音」を流すと、ガはそのスピーカーの近くに卵を産みたがる傾向を見せた。植物が見えない状況では、音が「あそこに植物があるぞ」という目印になったわけだ。

 しかし、本物の植物を用意した実験では結果が逆転した。「健康で静かな植物」と「水不足でクリック音を発している植物」を並べると、ガは迷わず静かな植物を選んで産卵したのである。

 これは極めて合理的な生存戦略だ。ガにとって、産卵場所は子供(幼虫)の餌場そのもの。水不足でカラカラの植物は、いわば「土台が腐り、冷蔵庫も空っぽの崩壊寸前な欠陥物件」のようなものだ。せっかく卵を産んでも、子供たちが孵化する頃に建物(植物)が倒壊(枯死)してしまっては元も子もない。ガは植物の「悲鳴」を聴くことで、将来性のない物件を賢く避けているのである。

「視覚・嗅覚・聴覚」を駆使するハイテクなガ

 この研究で興味深いのは、ガが「音」だけでなく「匂い」も同時に利用している点だ。ガの触角は、乾燥した植物と潤った植物のわずかな匂いの違いを敏感に察知する。ガは音で大まかな場所を特定し、近づいてからは匂いと音を統合して、最終的な「安全物件」を決定しているという。

 日本では古くから「草木も眠る丑三つ時」という言葉があるが、実は深夜の庭でも、喉を枯らしたトマトが必死にクリック音を鳴らし、それをガが「ここはダメだ」と冷静に評価しているのかもしれない。そう考えると、日常の景色が全く違って見えてくるような気もする。

 考えてみると、我々人間は「植物は動かず、話さない静かな生命」だと決めつけてきた。だが、実際には根っこを通じた化学物質のやり取り(いわゆる「ウッド・ワイド・ウェブ」)だけでなく、空中を通じた「音」のコミュニケーションも行われていたのだ。

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Image by ericeven1 from Pixabay

未知の「対話」が溢れる世界

「今回の発見は、植物と昆虫の間の音響的な相互作用を示す初めての証拠ですが、これはまだ始まりに過ぎません」と研究者たちは語る。

 今後は、ハチのような授粉媒介者や、害虫を食べる捕食者たちも、植物の「声」を聴いている可能性が調査されるだろう。もし特定の音で害虫を追い払ったり、逆に益虫を呼び寄せたりすることができれば、農業のあり方すら変わるかもしれない。

 一見すると、ガが産卵場所を選んでいるだけの地味なニュースに見えるが、これは「自然界には人間が感知できない情報の海が広がっている」という事実を突きつけている。我々の足元で、あるいは耳元で、今日も植物と動物の未知なる対話が繰り広げられているのだ。

参考:Earth.com、ほか

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