AIが捏造した「幻の温泉」に観光客が殺到! 存在しない楽園へ誘われた人々の末路=タスマニア

AIは今や、私たちの生活を支える「全知全能の神」になろうとしている。だが、その神が時として「真っ赤な嘘」をつき、人々を奈落の底……ではなく、存在もしない山奥へと導くことがあるとしたら?
オーストラリアのタスマニア島で、あるAIが捏造した「幻の温泉」を信じ込み、数千キロもの旅をして何もない田舎町に辿り着いた観光客が続出するという、笑えない事件が起きた。
「AIのハルシネーション(幻覚)」は珍しくないが、実在しない観光地にこれほど多くの人間が物理的に動かされたという事実は、デジタル時代の新たな「怪異」を感じさせずにはいられない。
AIが描き出した「存在しない極楽浄土」
事件の舞台となったのは、タスマニア島北部にある小さな田舎町、ウェルドボローだ。もともとは静かな町だったのだが、ある時期から突如として、道行く観光客たちが「有名なウェルドボロー温泉はどこですか?」と地元住民に尋ね回るようになった。
発端は、タスマニアの観光情報を発信するウェブサイト「Tasmania Tours」が投稿したブログ記事だった。大手サイトとの競争に勝つため、彼らはAIを使って大量の記事を高速で生成していたのだが、そこでAIがとんでもない「幻覚」を見せたのだ。
記事は、ウェルドボローの森の中に「静かな天国」「日常からの逃避行」に最適な素晴らしい温泉があると、あまりにも魅力的に描写していた。しかし、そんな温泉はタスマニアの歴史上、どこにも存在しない。AIがゼロから作り上げた「フィクション」だったのである。
住民たちの当惑と、デジタルに釣られた人々
地元の「ウェルドボロー・ホテル」のオーナー、クリスティ・プロバート氏は困惑を隠せない。
「最初は数件の問い合わせ電話から始まりました。でも、すぐに大勢の人が押し寄せてきたんです。一日に5件は電話があり、毎日2〜3組の宿泊客が『温泉はどこだ』とやってくる。ここは非常に人里離れた場所なのに、あまりにもランダムで不気味な光景でした」
これは現代版の「迷い家」のような話ではないだろうか。かつて日本では、山の中で幻の家に出会う伝承があったが、今や人々はスマホの中に現れた「デジタルの幻」に誘われ、見知らぬ土地へと引き寄せられているのだ。
温泉があるはずの場所には、ただの森が広がっているだけ。期待に胸を膨らませてやってきた観光客たちの絶望は、想像するに余りある

崩壊する信用と「便利さ」の代償
この騒動を受け、旅行サイトのオーナー、スコット・ヘネシー氏は「オンラインでのバッシングや評判へのダメージは、魂が砕かれるほどの苦痛だ」と悲鳴を上げている。AIのミスをチェックすべき人間が、その役割を果たせなかった代償はあまりにも大きかった。
考えてみると、私たちは今、旅行の計画から費用の計算まで、あらゆる判断をAIに委ねつつある。AIが提示する情報は、時として「それっぽさ」が完璧すぎるため、誰もその裏を取ろうとしなくなっているのだ。
一見すると、単なるプログラムのバグによるドタバタ劇に思えるかもしれない。だが、これは氷山の一角に過ぎない。もしAIが、悪意を持って(あるいは今回のように悪意なく)、存在しない村や、存在しない法律、あるいは「存在しない真実」を提示し続けたら、私たちの現実は一体どうなってしまうのだろうか。
次にあなたがAIのおすすめする「隠れた名所」へ行くときは、その場所が本当に物理世界に存在するか、念入りに確認したほうがいい。さもなければ、デジタルの神が見せた「美しい幻覚」の出口で、途方に暮れることになるかもしれないのだから。
参考:Oddity Central、ほか
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2024.10.02 20:00心霊AIが捏造した「幻の温泉」に観光客が殺到! 存在しない楽園へ誘われた人々の末路=タスマニアのページです。温泉、AI、ハルシネーションなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで