“完全なる暗闇”に5日間閉じこもると人間はどうなるのか? 女性科学者が自らの体で証明した「幻覚」と「未知の覚醒」

完全な暗闇の中に居続けるとどうなるのか――。科学者が自らの身体で人体実験を行っている。
■完全な暗闇の中で5日間過ごした科学者
カリフォルニア大学サンディエゴ校の生物工学者であるキアナ・アラン氏は、ウェアラブルデバイスや血糖値測定システムなどで常に自分の身体を測定している。市場に出回った新しいセンサーは必ず試しているという。
2024年11月、アラン氏は多数のバイオセンサーを携えてポーランドにある地下洞窟施設「Within Darkness Retreat」に5日間滞在した。この施設は静寂な暗闇の中で心身を癒すスポットとして有名である。
滞在期間中、腸内細菌叢の配列解析と代謝分析のために、便、血液、唾液、皮膚、尿のサンプルを採取し、滞在の前後を含めて広範なデータを収集して彼女の身体がどのように変化したかを分析した。
洞窟施設は狭かったものの快適で、ベッド、小さなシャワー、座る場所があったが、もちろん真っ暗の暗闇であった。真っ暗闇は科学的には光の感覚遮断(Sensory Deprivation)ということになる。
滞在を開始してアラン氏が最初に気づいたことの一つは、五感が研ぎ澄まされ、食べ物の味がより美味しく感じられるようになったことだった。それはデータにも表れていて、嗅覚受容体(匂いと味を感知するタンパク質)の活性が著しく上昇していたのだ。
アラン氏はこの現象は彼女の身体が視覚や聴覚の刺激を一切受けていないため、知覚できるものをより多く取り込もうと必死になっているからだと考えている。
データ分析の結果、彼女の免疫反応が活性化していたことが判明した。血糖値は食後も安定していた。グルコース代謝は概日リズムと関連しているため、暗闇の中で昼夜の感覚を失ったことで、グルコース輸送タンパク質であるGLUT4が過剰発現していることも判明した。
アラン氏の皮膚と唾液のマイクロバイオームも2日目までに変化した。一方、腸内マイクロバイオームはより回復力が高まった。偶然かもしれないが5日間完全な暗闇の中で過ごした後、周囲の者からアラン氏の肌艶がよくなったとの指摘もあったという。
洞窟での滞在は、精神的に大きな試練となったという。科学メディア「Popular Mechanics」によると、普段の生活では活動的なアラン氏は施設内で落ち着きがなくなり、頭を休めることが難しくなり幻覚も経験したという。

それでもやがて彼女の心は落ち着きを取り戻し「自分の人生と、人生に関わってくれた人々への深い感謝の気持ちが湧き上がってきた」と彼女は語っている。
「私たちは人生における人の重要性を過小評価しがちだと思う。周りに人がいなければ、私の科学研究はどれも意味をなさないだろう、という思いが湧いてきました」(アラン氏)
洞窟を出た後も、彼女は感謝の気持ちを抱き続けた。国立衛生研究所(NIH)の検査では、この体験の後、彼女の思いやりが著しく高まったことが示された。
「今でも以前より思いやりが増したと思います。こういう瞬間こそ、周りの人々と共に大切にしなければならないのだと気づきました」(アラン氏)
この経験を通してアラン氏には意識の定義など、より哲学的な疑問も浮かび上がったという。
「これ(意識)は本当に、環境に反応して変化を生み出し、それが感情や感覚として表現されるという、私たちの生物学的な働きなのでしょうか? それとも私たちとは全く別の何かなのでしょうか?」(アラン氏)
アラン氏は人間が外部刺激をどのように感知し解釈するのか、あるいは刺激の欠如にどのように対処するのかをより深く理解するためにさらなる感覚遮断実験を行う予定である。
はたして感覚遮断実験が意識の謎に迫る糸口となるのか、今後の研究の進展が期待されてくる。
参考:「Popular Mechanics」ほか
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2024.10.02 20:00心霊“完全なる暗闇”に5日間閉じこもると人間はどうなるのか? 女性科学者が自らの体で証明した「幻覚」と「未知の覚醒」のページです。暗闇、人体実験、意識、感覚遮断、生理学洞窟などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで



