炎のキツネ、亡き家族の霊、そして“頭蓋骨のサッカー”……! 古代人が夜空のオーロラに見出した恐怖のサイン

夜空にゆらめく緑や紫の光帯——オーロラの正体は、太陽から降り注ぐ電子が地球の磁場に導かれて大気とぶつかり合う現象だと、米海洋大気庁(NOAA)は説明している。
だが、こうした科学的な種明かしが可能になったのはごく最近のことだ。文明の夜明け前、洞窟から這い出て夜空を見上げた人類の祖先にとって、この光はまさに神々か死者の仕業としか思えなかっただろう。今回は世界各地に残る、オーロラにまつわる奇妙な言い伝えの数々を覗いてみよう。
動物たちが繰り広げる「空の攻防戦」
北米の一部のイヌイットの人々は、オーロラを「アクサルニット」と呼ぶ。直訳すると「サッカー選手たち」だ。祖先の霊たちが天空でセイウチの頭蓋骨を蹴り合っているというのが、その名の由来だという。
もっとも、伝承には別バージョンもある。逆にセイウチたちが人間の頭蓋骨を蹴り飛ばしているのだという、なんとも物騒な言い伝えも残っているというから恐ろしい。
一方フィンランドでは、オーロラは古くから「レヴォントゥリ」、すなわち「炎のキツネ」と呼ばれてきた。北極圏の平原を1匹のキツネが駆け抜け、その尻尾が雪や空をかすめて火花を散らす——それがオーロラの正体だという、どこか愛らしい民話だ。

サーミの人々が恐れた「死者の魂」の光
フィンランド、スウェーデン、ノルウェー北部に暮らす先住民サーミ(欧州連合が公式に認定する唯一の先住民族)の伝統的な信仰では、オーロラは死者の魂が姿を変えたものとされてきた。
光が現れると、人々は敬虔かつ厳粛にふるまうことを求められた。もし光の下で不敬な態度を取れば、不運や病、最悪の場合は死までもたらされると恐れられていたという。
さらに、光に気づかれ注目を浴びてしまうと、そのまま空へさらわれてしまうという言い伝えまであった。
一方でオーロラには対立や緊張を鎮める霊的な力も宿るとされ、シャーマンの太鼓にはその力を借りるためのオーロラを象ったルーン文字が刻まれていたそうだ。畏れと信頼が同居する、なんとも複雑な光だったらしい。

犬が吠える先にいる、北米先住民が見た死者たち
北米の先住民の間にも、オーロラを死者の魂と結びつける伝承は数多く残る。
例えばクリー族には、空で舞い踊る精霊たちがオーロラを生み出しているという言い伝えがある。彼らの信仰では、犬がオーロラに向かって吠えるとき、それは亡くなった家族や友人に向かって吠えているのだと考えられてきた。
一部の部族では、オーロラを通じて亡き大切な人と言葉を交わすことができるとも信じられていたという。北欧のヴァイキングたちの間にも、これと似た信仰が伝わっていたと伝えられている。
科学は電子と磁場の物語としてオーロラを解き明かした。それでも、極寒の地で夜空を見上げた人々が、そこに死者の魂や炎のキツネの姿を重ねずにいられなかった気持ちは、なんとなく分かる気がする。空を見上げて「きれいだな」の一言では済ませられないのが、人間の想像力のおもしろいところなのだろう。
参考:Mental Floss、ほか
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