地球上で最も黒い「黒色」が開発される ― 光を飲み込む「バンタブラック」。ブラックホールに最も近い世界

 英国の研究者は、科学界の「新しい黒」を開発した。「バンタブラック」「スーパーブラック」と呼ばれる黒色だ。この素材は、可視光の透過率0.035パーセントで、世界記録を打ち立てた。人間の目が、その形と大きさを認めるのに苦労するくらい黒く、ブラックホールの様相を呈しているともいわれている。ちなみに、もしこの素材をドレスに使うとしたら、とてつもなく高価な服になる上、着ている人の頭と手足がまるで浮いているように見えてしまうらしい。


■可視光透過率0.035%の世界記録を樹立

 この素材はサリー・ナノシステムズ(Surrey Nanosystems)社が、カーボンナノチューブを使って、天文カメラ、望遠鏡、赤外線スキャン システムで使用するために開発したものだ。

地球上で最も黒い「黒色」が開発される ― 光を飲み込む「バンタブラック」。ブラックホールに最も近い世界の画像1画像は「Daily Mail」より
 素材の開発は、アルミホイルの上で進められた。上記の写真が示すように、実際はアルミホイルがでこぼこな状態でもバンタブラックによって覆われた部分は、光が吸収され、完全に滑らかに見える。

■“ブラックホール”に最も近い黒色

 サリー・ナノシステムズ社技術部のチーフ、ベン・ジェンセン氏はバンタブラックは光学機器のナノテクノロジー応用において、英国が成し遂げた偉大な発展だと語る。

 そして、色彩科学の教授であるリーズ大学のスティーブン・ウェストランド教授は、「この素材は、高感度望遠鏡の能力をさらに向上させ、迷光を減らします」と、インタビューに答えている。また教授は、「これらの新しい素材は我々が入手可能な中で最も黒く、我々が想像する“ブラックホール”に最も近いものだ」とも語った。

 このような優れた発明は、当然軍事的な用途に応用されることが懸念されるが、サリー・ナノシステムズ社は、「軍事的な用途があるかどうかの質問には一切答えられません」とガードが堅い。この素晴らしい発明を、どうか人間の生活向上のために使用してほしいと願わずにはいられない。

参考:「Daily Mail」、「Independent

文=美加リッター

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