エボラのワクチン開発不要論! “無症候者”の免疫システム研究がカギ?(医学論文)

 さらにフランスの研究機関、IRDが2010年に公表した研究によれば、現在のカボン共和国の国民の15.3%がエボラに対する免疫を持っているという。

 医学誌「The Lancet」に先日、小論文を寄稿した研究者、スティーブ・ベラン博士は、生まれながらのエボラ免疫耐性を持つ無症候者を研究することは、治療法の開発を推し進めエボラを収束に向かわせるだろうと述べている。

 現在、エボラ回復者の血液から血清を作り出す取り組みや、エボラ抗体をもとにしたワクチン開発が急ピッチで進められている(いくつかの試薬は実際に投与されている)が、研究者の一部からは血清やワクチンの開発に疑問の声が上がっているという。

 血清は同じ血液型の者にしか使用できず、効能がどれくらい持続するのかも不明で守備範囲は狭く、ワクチン開発にしてもエボラウイルスには実に様々な菌種があり、しかも刻々と変異していることから、抗体の有効性が保証できないことなどがその理由だ。そこでベラン氏は“生還者”よりも“無症候者”に注目すべきであると主張しているのだ。

「現在西アフリカで行なわれている血清学的調査と共に、無症候性の免疫システムについての早急な研究をはじめるべきです。これによって感染者の症状を抑えられるであろうし、免疫が無い人々をあらかじめウイルスから守ることができます。ワクチンの開発を待つ必要もなくなるのです」(スティーブ・ベラン氏)

 果たしてベラン氏の提案が日の目を浴びて実行に移される日は来るのか、そしてこれによりエボラ治療、収束に向けた新たな活路が拓けることになるのか、慎重かつスピーディな検討が必要とされているのかもしれない。
(文=仲田しんじ)

参考:「Popular Science」、「テキサス大学」ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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