>  > 難病で死んだ象の肉「エレテキ」を喰った人間

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――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

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※イメージ画像:『象を喰った連中【VHS】』

『象を喰った連中 科学と生命に関する一考察』
1947年・松竹大船(モノクロ)
監督/吉村公三郎 脚本/吉村公三郎、齋藤良輔、池田忠雄
出演/原保美、笠智衆、神田隆ほか

 戦時中の動物園では、トラなどの猛獣や毒ヘビなどの危険動物が、空襲で町に放たれることを防ぐため、行政の命で殺処分が行われた。上野動物園のゾウ・花子を餓死させた話に涙した日本人は多いが、戦後も食糧事情の悪さから小動物は肉食動物の餌に回されたという。そんな暗い世相を吹き飛ばすべく、戦地から生還したひとりの映画監督が復活を遂げた作品は『象を喰った連中』という人を喰った、いや象を喰ったタイトルだった。

 監督の吉村公三郎は、戦前にチャールズ・チャップリンの映画に感銘を受け業界に入り、1939年に岸田國士(文学座創設者の1人。岸田今日子の父、岸田森の叔父)原作の『暖流』で高い評価を得たのち、1947年の『安城家の舞踏会』でキネマ旬報ベストワンに輝いた。同年に撮ったもう1本が、今回紹介する作品だ。

 本作品はかつて松竹ホームビデオからビデオテープが発売されていたが、その後ソフト化される気配がないので、ここでは結末まで紹介していこう。

 まずオープニングから「おっ」と思わせる。キャスティング紹介で、原保美・日守新一・笠智衆・阿部徹・神田隆という5人の俳優が、わざわざ「象を喰った連中」という括りでテロップされる。その後に「彼等をめぐる女たち」で7人の女優が、その他11人のキャストは「象を喰わない連中」で一まとめに。遊び心が利いたタイトルロールだ。

■あらすじ

 とある東京の動物園(ぶっちゃけ上野動物園)で象のシロウが病気になる。動物園は小島細菌研究所に治療を依頼するが、所長の小島博士(横尾泥海男)は60歳にして、どう見ても30歳くらい若い新妻と新婚旅行中。そこで若い弟子の馬場(原保美)と和田(日守新一)が治療に当たるが、「うえ~、大変な鼻血だねえ」「でっかいシャックリだねえ」「なんだろうねえ」と、まるで頼りにならずシロウは死んでしまう。症状を旅先で聞いた博士は「おそらく馬鼻祖(ばびそ)菌だ。感染したら死ぬ」と推察。新妻の「じゃあ、食べたらダメね」に、「まさか、象を喰う奴はおるまい」と笑い飛ばす。直後、馬場と和田がブツ切りにされたシロウの肉をフライパンでジュージュー焼いている(笑)。

 飄々とした馬場を演じた原保美は、特撮ファンには鬼才・実相寺昭雄作品の常連として馴染み深く、テレビでは『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」(66年)、『レモンのような女』(67年)、『怪奇大作戦』(68~69年)。劇場作品では『曼荼羅』(71年)、『哥』(72年)、『悪徳の栄え』(88年)に出演している。

 さて研究所では和田が、同僚の渡辺(神田隆)と野村(阿部徹)、象使いの山下(笠智衆)に、シロウとは知らさず肉を食わせる。「美味い!」と食べてしまった渡辺に何の肉か聞かれた和田は「象テキ? エレテキ?(エレファント・ステーキ)」。治療中「シロウちゃんは長い親友なので、どうか助けてください」とオロオロしていた山下は喉を詰まらせ外へ飛び出す。……和田、酷い。帰宅した山下がそれを妻に話すと、「まあ、早く吐かなければ」と筆先で喉をくすぐる。妻は、シャム(タイ)で同じような症状の象を喰った夫婦が30時間後に死んだ事件を話す。

 60年代以降はテレビやスクリーンで毎日のように、刑事ドラマや時代劇で逮捕され斬り殺される神田隆と阿部徹という2大悪役が、ここでは善人役なのが面白い。また『男はつらいよ』の住職で有名な笠智衆が、鼻の下にチョビヒゲたくわえて悲哀を含んだユーモラスな演技をしている。ここは吉村監督のチャップリンなのだろう。

 山下は馬場と和田の元へ駆けつけ「私たち、あと29時間で死にます!」。責任のなすり合いを始める馬場と和田。象を喰った5人が集まり象の死因を調べると、シロウの死因は家畜伝染病の類鼻祖(るいびそ)菌と判明する(小島博士、ほぼ的中)。彼らは全国の施設に血清の有無を問い合わせるが、どこにもストックがない。観念した5人はおのおの、タイムリミットの翌日22時まで最期の日を家族や恋人と過ごすが、血清が盛岡市の農業試験場で見つかる!

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