難病で死んだ象の肉「エレテキ」を喰った人間たちの滑稽な末路を描いた【封印映画】! その内容とは?

 その頃、馬場は帰省し「親不孝をお許し下さい」と両親に別れを告げていた。母親は父親に「あんまり勉強させたんで、神経衰弱にでも」。父親は「そうだな」と簡単に納得。そこへ「薬あった。18時に上野駅に来い」と電報。「助かった」と裸足で飛び出していく息子に驚いた母親「パパ、止めて。今東京へ行かせたら本当のキチ○イになってしまう!」

 5人が待つ上野駅に、盛岡から血清を運ぶ職員の乗った汽車が到着。時間がないと駅のテーブルで注射を始めようとするが、汽車の殺人的ラッシュの衝撃でアンプルが1本割れている。馬場「誰か1人死ぬんだ」

 5人は口々に「僕はヤダ」「僕も嫌だな」と。遠方から来たため遅れた馬場は潔く「僕はいいよ。遅刻して来たから間に合わなかったと思えばいいんだ」。それに呼応するように渡辺が「いや、これは歳の順で僕が」と言うと、皆が「どうぞ、どうぞ」とダチョウ倶楽部のように遠慮し始める。ここの会話はふざけた感じだが、逆にきれいごとに感じなくてよい。

 ここで5人に象を喰わせた元凶の和田が、折れたマッチを引いた人が注射を打てないというクジ引きを提案。結果、和田がハズレを引く。「みなさん、さようなら」とその場を去った和田が、柱の陰で最後の1本のマッチで煙草に火をつけようとする。が、そのマッチは折れていない。和田は黙って責任をとる気概を見せたのだ。盛岡の職員が追いかけてきて、ライターで煙草に火をつけ「みんな見ておりました」。この上野駅の件は素晴らしい。

 下宿で、和田と恋人とみ江が抱き合っている。そこへ馬場、渡辺、野村がズカズカと見届けに来る(お邪魔だって)。だが22時を過ぎても和田が死なないので、馬場が小島博士に電話すると、「焦げるほど焼いた? それでも科学者か! たいがいの菌は摂氏70度以上の熱で死滅するぐらいのことは小学校の理科の教科書にも出とる!」。和田「君のためなら50年でも100年でも生きるよ」。とみ江「まあ、象じゃあるまいし」。和田「象の話は、もうオシマイにしようよ」でオシマイ。

 とてもハートフルな喜劇で、予備知識がないとタイトルだけでは判断できない話だ。なんでも吉村監督がどこかで読んだ、宝塚動物園で病気の象を食べた人たちがワクチンを探した実際の騒動が元ネタらしい。ちなみに、この作品は1960年にKR(現・TBS)の日立劇場でテレビドラマ化され、誰の役か不明だが2016年に逝去した名俳優・平幹二朗の名がキャストされている。こちらも観てみたいが、当時のテレビ番組はほとんど出回っていないので絶望的だ。フィルムの残っている劇場版のソフト化を期待したい。

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
ウェブ連載・「幻の映画を観た! 怪獣怪人大集合

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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