「ムー」編集長・三上丈晴の【ムー的書籍探訪】 第8回

帝都・東京の背景には、陰陽師・安倍晴明とあの“首塚”で有名な豪族の深〜い関係があった?

――「世界の謎と不思議に挑戦する」をコンセプトに掲げ、UFOからUMA、都市伝説、陰謀論……と、さまざまな不思議ジャンルの話題で、読者に驚きと感動を与えてきた学研「ムー」。ここでは、そんな「ムー」を操る三上丈晴編集長が厳選した“マストブック”を紹介しながら、世の中の不思議に深く触れていただきたい。

【Tocana Reader’s MustBook No.8】
帝都・東京の背景には、陰陽師・安倍晴明とあの首塚で有名な豪族の深〜い関係があった?の画像1月刊「ムー」3月号/総力特集「陰陽師・安倍晴明と『裏天皇』の謎」

 希代の陰陽師、安倍晴明の出生には謎が多い。安倍氏とは称すものの、その系図には疑問があり、おそらく偽造されたものだというのが歴史家の共通した意見だ。とくに、先祖として遣唐使として有名な阿倍仲麻呂の名が登場するあたり、安倍晴明とは格があまりにも違いすぎるという。身分制度が厳格な平安時代委ではありえないのだ。

 父方だけではない。母方も謎が多い。浄瑠璃では、安倍晴明の母は狐だという設定になっている。尋常ならざる能力をもつ安倍晴明は一般の人間とは違い、特別な存在の血を受け継いでいるという思いからなのだろうが、見方を変えれば、それだけ素性が明らかではないことを物語っている。

 それに、もうひとつ。安倍晴明に関しては出身地が定かではない。京都や大阪、讃岐の出身ともいわれる一方で、東国、常陸国の人間であるという説がある。現在も、茨城県の筑波山のふもとにある猫島には、安倍晴明の出生を今に伝える家がある。

 もし仮に、安倍晴明が東国出身だと仮定した場合、実は、様々な謎が解けてくるとともに、隠された天皇家の秘密まで明らかになるという。この謎に挑戦しているのが、本誌で総力特集「安倍晴明と『裏天皇』の謎」を執筆した歴史研究家、斎藤忠氏である。

 古代史に関する独自の説を展開する斎藤氏は、まずアベ氏の拠点が主に関東から東北という東国に偏っていることから、関東の安部氏であった晴明は貴族である安倍朝臣家に養子に入ったのではないかという説を展開。系図が不自然なのは、それが理由ではないかと指摘する。

 さらに安倍晴明が生まれた当時、関東を支配していたのは、かの平将門である。新皇を名乗り、関東独立を目指した平将門は朝廷から逆賊と見なされて討たれたことは、よく知られるが、安倍晴明との関わりについては、あまり注目されてこなかった。安倍晴明が常陸国出身だとすれば、両者は顔を合せないにしても、同じ空気を吸っていたことは間違いない。

 ここからウェブサイト「闇の日本史」を主催する竹内敏規氏は、実に大胆な仮説を提唱する。すなわち、安倍晴明は平将門の子供だったというのだ。作家、荒俣宏氏の小説『帝都物語』では、安倍晴明の子孫が平将門の怨霊と対峙するという設定だったが、そもそも両者が親子関係にあったという説は実に斬新である。

 親子説に関して、斎藤氏は慎重な姿勢を貫きながらも、安倍晴明が平将門の遺志を受け継いだ可能性は十分あると見る。平将門が目指した関東王朝の樹立を、安倍晴明が陰陽道という呪術を使いながら、密かに成し遂げたというのだ。実に1000年以上にもわたるこの壮大な計画は、後世、同じく陰陽師だった天海が徳川家康を動かすことにより、江戸幕府として実現し、幕末には天皇が関東入りすることで、東京が帝都と確立したのだ。

 ここには表の天皇「天の帝」と裏の天皇「土の帝」というふたつの王統が隠されているのだが、詳しくは本誌を読んでいただきたい。ちなみに、近く単行本としてまとめる予定もあるので、期待してほしい。

●三上丈晴(みかみ・たけはる)
1968年、青森県生まれ。学研「ムー」の5代目編集長。筑波大学を卒業後、学習研究社(現・学研)に入社。「歴史群像」編集部を経て、入社1年目より「ムー」編集部に所属。

●「ムー」
出版社:学研パブリッシング/発売日:毎月9日/税込価格:670〜690円/発行部数:7万部/概要:「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」として、UFOや超能力、UMA、怪奇現象、オーパーツ、陰謀論など、オカルト全般を追求する情報誌。
公式HP<http://gakken-publishing.jp/mu/

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