愛しき妻を笑わせるため… ピンクのチュチュ中年男の愛!
ホワイトデーに読みたい 麗しき男女の愛! ~「笑っておくれ、愛しき我が妻よ」 ピンクのチュチュ中年男より~
■ただただ、妻を笑わせたかったんだ
彼がピンクのチュチュのシリーズ「Ballerina」を撮り始めたキッカケはこの、リンダを襲った乳がんだった。2002年、乳がんが発覚する1年前に、ボブはフェニックスのバレー団からバレーそのものをテーマにした写真作品を作ることを依頼された。この時彼は、チュチュを着た自分のシルエットを撮影したモノクロの作品を制作している。この仕事がのちにピンクのチュチュのセルフポートレートを撮るヒントとなった。
なぜ上半身裸でピンクのチュチュなのか? 動機はシンプル。死の恐怖に直面し、打ちひしがれながらも賢明に病と闘う妻を、彼はただ、笑わせたかったのだ。笑いに治癒効果があることは医学的にも実証されている。ともすると世間から人格を疑われ、キワモノ扱いされかねないリスクを負いながらの撮影(実際、ニュージャージ州リッジウッドのプールでの撮影時には近隣住民の通報により警官が呼ばれている)は、ボブにとって妻を殺そうとする病魔と共闘するための決意表明であり、ピンクのチュチュはいわば「愛妻のがん」というシビアな現実と闘うためのアーマーだった。
ボブの写真はリンダに笑いと、がんに立ち向かう勇気を与えた。そして、彼女は同じ病を患う周囲の女性たちにボブの写真をシェアすることにした。闘病生活に苦しむ同志たちの気持ちを少しでも和らげてあげたかったから。リンダの試みは功を奏し、ピンクのチュチュをまとったボブの姿は、彼女たちが化学療法の最中に不安で退屈な時間をやり過ごすための格好の慰みとなった。見た者は笑わずにいられないからだ。
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