ドビュッシーやディズニーも影響された葛飾北斎!! 名画「富嶽三十六景」ができるまで
■「富嶽三十六景」の誕生!
こうして生まれたのが葛飾北斎の「富嶽三十六景」なのだ。雅号とともに絵のスタイルを大きく変化させてきた葛飾北斎だったが、実はこの「富嶽三十六景」を描いた時、齢72歳。古来稀なりと呼ばれた、古希を過ぎてからのことだった。
時はあたかも、今の世と同じく富士山ブーム。
古くから信仰を集めていた富士山だったが、北斎の時代には江戸の人たちがこぞって市中に富士塚を作り登ったわけだが、それと同時に富士山図をこぞって求めていったのである。
北斎は実際に取材もしたが、「本所立川(ほんじょたてかわ)」を見てもわかるように、実際にはあり得ないアングルから描いている。実際に見た絵を、頭の中で組み立てて再構成をしたのだろう。
海外でも「ビッグ・ウェーブ」と呼ばれている「神奈川沖波裏」をはじめとして、北斎の名は世界に知られているが、この絵は神奈川ではなく千葉県木更津から眺めた富士だそうだ(浪は神奈川)。
これぞ、波の動きを脳のシャッターで描いたもの、まさに脳内再構成の極致である。
浮世絵の歴史200年という長さに加え、齢72歳という画業の経験が融合し、「富嶽三十六景」において北斎の脳みそのシャッターが結晶化されたというわけだ。
この絵が印象派の画家に影響を与えたのはもちろん、ドビュッシーにインスピレーションを与え、交響詩「海」を作らせたこと。また、ウォルト・ディズニーのアニメーション「ピノキオ」の海も、この絵を参考に作られてるなど、世界に与えた影響は枚挙に暇ない。
まさに富士山とともに日本を象徴する一枚が、ここに完成したのである。
■小暮満寿雄(こぐれ・ますお)
1986年多摩美術大学院修了。教員生活を経たのち、1988年よりインド、トルコ、ヨーロッパ方面を周遊。現在は著作や絵画の制作を中心に活動を行い、年に1回ほどのペースで個展を開催している。著書に『堪能ルーヴル―半日で観るヨーロッパ絵画のエッセンス』(まどか出版)、『みなしご王子 インドのアチャールくん』(情報センター出版局)がある。
・HP「小暮満寿雄ArtGallery」
・ブログ
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