人間がやってきたことはすべて“変”なんじゃないか? ― 『奇界遺産2』佐藤健寿インタビュー 圧倒的写真と秘話
レイモンドモラレスの彫刻
――では、さまざまな観点から撮影されていますが、特にアート的な観点からすれば、どれが好きなどはありますか?
佐藤 フランスのレイモンドモラレスの彫刻庭園でしょうかね。美術館というか展示することに興味がなかった作者が、自宅の裏庭にコツコツと作品を置いていたんです。生前は野外ミュージアムのように公開していたんですけど、亡くなってしまい、その後は完全に閉鎖。3mくらい塀に囲われていて、道路から見ると、上部が少しだけ見ることができ、すごい異形なんですよね。作者の甥に連絡を取り、中を撮らせてもらいました。
――レイモンドモラレスの作品一つ一つに恐縮してしまいかねない迫力がありますね。
佐藤 元々は板金屋さんだったらしいんですが、創作活動への意欲が強い方だったのか、ある日、急に。全部船などの廃材を使って作られているんです。
――作品のテイストは、フランス人っぽくない気もしますね。
佐藤 何人っぽいかと言われてもよくわからないんですけどね。でもアジアでもないし。もう一つの北欧にあるフィンランドの『ベイヨー・ロンコネン公園』はもう少しフォークアート的ですが、どちらも突然変異的ですね。
――確かにそうですね。それにしても、この写真に解説に書かれている作品の貸出をお願いした際の“彼らに聞いてみたんだけど、みんな美術館なんかには行きたくないって言ってるんだ”という一文がグッと来ました。
佐藤 僕はこれを本の帯にしたかったくらいです(笑)。
――でも、これらに代表されるように、誰かに見られるわけでもないのに、作品を作り続けられる創作意欲、パワーは素晴らしいです。
佐藤 パワーというとエネルギッシュで前向きなイメージがあるんですけど、彼らのやっていることはもっと内向きですね。それこそ、子どものラクガキ。それはクオリティの意味ではなくて、目的のないピュアな創作というか、それを大人になっても維持している。誰に見せるためでも、まして有名になるためでもなく、それを造らざるを得なかった人たちですね。
――なるほど。その内向的な力が源である、と。では、最後に様々な場所や地域を巡ってきたと思いますが、今行きたい場所などはありますか?
佐藤 行きたい場所はほぼ行ったんですけど、あとはシベリアとかですかね。ロシアは、ある意味中国以上にすごい閉鎖的なんですよ。日本人が知っているロシアといえば、サンクトペテルブルクとモスクワぐらいで、あの広大な土地になにが起こっているのかは、ほとんどわからないじゃないですか。中国は最近はニュースで報じられたりもするんだけど、ロシアは本当にずっと冷戦があったこともあって、謎なんです。開拓したいんですけど、行く場所全てに事前申請が必要なんです。なので、今回も行こうとした場所がいくつか断られました。またいずれは、という形になるかもしれませんが…。
(構成=編集部)
■佐藤健寿(さとう・けんじ)
武蔵野美術大学卒。自然と珍奇といった博物学的視点、タブーと奇習といった美学的視点をテーマに世界中の奇妙なものを撮影している。写真集『奇界遺産 THE WONDERLAND’S HERITAGE』(エクスナレッジ)、著書に『X51.ORG THE ODYSSEY』(講談社)などがある。
・「X51.ORG」 ・「KIKAIISAN.COM」
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