人類の半数以上が保持している新種の古代ウイルス「クラスファージ」が発見される
私たちは多くの細菌により食べ物を消化し、栄養素を吸収しているが、あなたの体内にいまだ発見されていない古代ウイルスが存在しているとしたらどう思うだろうか?
■全人類の半数以上がキャリア
サンディエゴ州立大学のロバート・エドワーズ博士が、全人類の半数以上の腸内に存在しているとされる新種のウィルスを発見した、と科学誌「Nature Communications」に論文を発表した。
今回発見されたのは「crAssphage(クラスファージ)」というウィルスで、多くの人の腸内にある「Bacteroidetes(バクテロイデス)」という腸内細菌に寄生していることが判明した。
■発見までの道のり
ロバート・エドワーズ博士は12人の便の中のDNAサンプルを解析。その際、9万7,000の塩基対(えんきつい)から成り立つ新しい形式のDNAウイルスに気づいた。
※塩基対:デオキシリボ核酸の2本のポリヌクレオチド分子が、アデニン(A)とチミン(T)もしくはウラシル(U)、グアニン(G)とシトシン(C)という決まった組を作り、水素結合で繋がったもの。「Wikipedlia」より
その後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)や、アルゴンヌ国立研究所「MG-RAST」の膨大なデータベースを検索すると、多くの人の腸内にある「Bacteroidetes(バクテロイデス)」という腸内細菌に寄生しているウイルスであることが分かった。
「たった1つのウイルスを探し当てるのは難しくない、ただ、多くの人の体内に存在するウイルスを新たに発見することはとても難しいことだ」とエドワーズ博士は語る。
■成人病治療に期待!?
今回発見された「crAssphage(クラスファージ)」が寄生する腸内細菌「Bacteroidetes(バクテロイデス)」はこれまでの研究により腸の細菌と肥満の間に大きな関わりがあることが指摘されている。
そのため、今後「crAssphage(クラスファージ)」の研究が進み、「Bacteroidetes(バクテロイデス)」をコントロールすることができるようになれば、消化器の病弊、糖尿病や肥満、成人病などの治療に大いに役立つと予想されている。
この新種のウイルス「crAssphage(クラスファージ)」は多くの人の腸内細菌に寄生するウイルスであるが、生まれたばかりの新生児の便には見られないことから、母子感染ではなく成長過程で何らかの方法により感染するウイルスであると、考えられている。とはいえ、未だ詳しいことは判明しておらず、寄生ウイルスのため単体での培養は難しいが研究チームでは培養するための研究を続けている。
発見者のエドワーズ博士は「このウイルスは私の知る限り人類創生以来の古いウイルスだ。ただ、なぜこんなにも当たり前のウイルスが発見されなかったのかは、本当に不思議でならない」と語り、「ファージ医学への鍵でもある」と今後の研究開発に意欲的だ。まだまだ未知なる不思議を秘める人体。今後の研究成果には医学界からも期待されているようだ。
(文=福島沙織)
参考:「Daily Mail」ほか
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