覚悟が足りない猪瀬直樹の告白本『さようならと言ってなかった』が、アノことも言ってない!

■中核派とは? 新宿騒乱事件とは何か?

 正式名称は、「革命的共産主義者同盟全国委員会」。その学生組織が「日本マルクス主義学生同盟・中核派」なので、通称として、中核派と呼ばれている。

 武装闘争での革命を志向する組織。ヘルメットを被り、「ゲバ棒」と呼ばれる角材を持って機動隊に立ち向かうというスタイルを編み出したのが、中核派だ。当時は、武装闘争を標榜する党派は幾多もあり、そのスタイルが模倣された。全共闘というのは全学共闘会議の略であり、党派を超えて組織された大学内の連合体だ。

 そして、新宿騒乱事件とは何か? 当時はベトナム戦争が激化しており、日本にある米軍基地からベトナムに向けて、爆撃機や輸送機が日々飛んでいっていた。事件の前年の67年8月8日未明、新宿駅ですさまじい爆音と共に、空に向かって炎が噴き上がった。ブレーキ操作のミスによる衝突で炎上したのは、米軍のタンク車。積まれていたのは、ベトナム戦争で使われる、航空機用ジェット燃料だった。国際反戦デーである10月21日に、この米軍タンク車の走行を停めようということで、中核派を始め、他の党派の学生たちも新宿に集まった。

  2008年、40年前の新宿騒乱を顧みようということで、副知事であった猪瀬氏に筆者は話を聞いている。


■2008年、猪瀬氏インタビューから

「だいぶ当時の記憶は薄れてしまっているんだけど、100人近い信大の学生を動員して、前日にどこか東京の大学に泊めてもらって、それで参加したんです。当時は東京の大学よりも、地方の学生の方が新宿に行った人間は多かったんじゃないかな。地方の大学の方が、動員力があったんですよ。

 新宿駅でも、機動隊との主戦場は東口でしたね。当時は西口なんて、大きな建物は京王プラザホテルぐらいで、後は何にもなかった。東口の一帯は角材を持った学生達と野次馬で一杯で、騒然としていました。仕事帰りの酔っ払ったサラリーマンまで一緒になって、石を投げているような状態だった。機動隊はジュラルミンの盾をズラッと並べていて、群衆と機動隊が一進一退の攻防を繰り広げていた。そこにみんなが石を投げたりしていると、今度は機動隊から催涙弾が打ち込まれてきたりね。またその飛んできた催涙弾を拾って機動隊に投げ返す奴までいたりと、もう催涙ガスと人いきれで凄い状態だった。

 駅前はそんな状態だったので、仲間と駅からちょっと離れてみたんです。花園神社のあたりに行くとすこしは落ち着いているんだけど、それでも路上に停めてあった自動車がひっくり返されて、そこに火炎瓶が投げ込まれて炎上していたりしてましたね。

 それから伊勢丹なんかがある三幸町の辺りまで行くと、タクシーまでがひっくり返されて火をつけられたりしてるんです。その辺では、お客が拾えるんじゃないかと流しのタクシーが走ってたんだけど、そういうのが群集に捕まってひっくり返されたりしてました。一番覚えてるのは、当時はかぶと虫と呼ばれていたフォルクスワーゲンがあったけど、それがひっくり返されていて、本当にかぶと虫がひっくり返ってるような姿でしたよ」

 実際には、1968年の新宿騒乱では火焔瓶は使われていない。使われたのは、翌年の国際反戦デーの新宿騒乱である。確かに記憶は、曖昧になっているのだろう。

 当時はまだ内ゲバもなく、学生運動には世間的な支持があった。党派の学生たちは2千人ほどだが、野次馬が2~3万人も集まっていた。ビアホールの窓際に席を占め飲みながら観戦しようという者もいたが、学生と一緒になって石を投げるサラリーマンもいたのだ。現場は大混乱となり、約3,200名の機動隊員のうち約1,600名が負傷した。警備の指揮を執った佐々淳行氏によれば、学生たちに取り囲まれてボコボコにされ、拳銃を奪われてしまった部隊もあったという。拳銃は部隊長しか持っていないので、それだけ学生と野次馬の威力は凄かったということだ。

 猪瀬氏は、感慨を語った。

「あの新宿騒乱が、1つの時代の変わり目だったことは確かだと思います。全共闘というのはある意味で自分探しの最初の世代なんです。戦後の高度経済成長も始まって、その中で60年代後半から大学の大衆化が始まった。就職はできるけど、その中で自分の役割が見出せないという世代だったんです。僕も、そういうデモに学生を動員する立場だったんですが、殺し文句の1つに『このヘルメットは機動隊に何回ぶちのめされたら割れるか知ってる?』というのがあった。みんな、そういう生々しい存在感を求めていたんですよ。そういう意味では、この新宿騒乱はその後も続いたお祭りの1つのピークだったんだと思いますね」

 青春の大きな転換点が、ここにあったということで、大きな意味のある発言だ。

 発表の前に猪瀬氏にゲラを見せると「闘争参加者ではなく、たまたま通りかかったことにしてくれ」と言われ、その内容は削った。

 小心な人だと思ったが、副知事という立場ならしかたがないか、と思った。だが、政治とは決別して、作家として再スタートするというのに、これを隠しているのはなぜなのだろうか?

 バッシングが始まるとそこに集中してしまうのは、日本人の習性だ。猪瀬バッシングの中では、彼の傲慢さは母子家庭で育ったことによると、もっともらしく論じる記事までが、リベラル系と目される新聞社発行の雑誌に載った。それでは猪瀬氏だけでなく、母子家庭で育った全ての人々を傷つけることになる。

 過熱するバッシングの中で、猪瀬氏が作家として蘇ることを待ち望んでいた身としては、もっと覚悟を固めてくれよ、と言いたい気持ちだ。
(文=深笛義也)

■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか? 革命か? それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ

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