覚悟が足りない猪瀬直樹の告白本『さようならと言ってなかった』が、アノことも言ってない!
なぜ、あのことが書かれていないのだろう?
10月末に発売された猪瀬直樹の『さようならと言ってなかった わが愛 わが罪』(マガジンハウス)を読んで思った。政治家としては素人だったと実感して、これからは作家に戻ってやっていくという、第1弾。ノンフィクションライター猪瀬直樹が、初めて自分のことを綴った1作である。
亡くなったゆり子夫人との出会いは、猪瀬氏が19歳、ゆり子さんが18歳の時。その青春時代から今までのことを、都知事としてのオリンピック招致活動、知事辞職に追い込まれた徳洲会からの5千万円の借り入れのことなどにも重点を置きながら、書いている。
しかし、ここで言いたい。政治とはもう縁を切るというのなら、なぜ、あのことを書かないのか?
もし、第三者のノンフィクションライターが猪瀬直樹を書くならば、絶対にそのことは抜かさないはずだ。
暴力を是とする過激な学生運動のリーダーだった猪瀬氏は、1968年10月21日の新宿騒乱事件に参加している。新宿駅は放火、破壊され、接続する交通機関は麻痺、翌朝は150万人の通勤・通学客に影響が出た。
首都を大混乱に陥れた一員であった青年が、後に東京都知事になったというのは、これほどおもしろいことはない。なぜ書かれていないのか?
学生運動のことは書かれているが、佐世保港への米空母エンタープライズ阻止闘争に参加の結果「わざわざ豆腐の角に頭をぶつけにいくようなものでもあった」として、それで冷めてしまったことになっている。しかし実際にはその後、猪瀬氏は、信州大学で中核派のキャップとなり、信州大学全共闘議長に上り詰めている。
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