Wi-Fi電波を“聴く”! 難聴だからこそ気づいた「聴覚デバイス」の大いなる可能性とは?
Wi-Fiの電波を“聴く”ことができる補聴器が登場して注目を集めている。Wi-Fiを経由して音楽コンテンツを聴くということではなく、Wi-Fi電波の存在を聴覚で確かめられるツールだということだが、いったいどんな機器で、どんな用途で使われるものなのか……。なんとそこには聴覚機器の大いなる未来が広がっていた。
■Wi-Fi電波を“聴く”補聴器を開発
ロンドンの聴覚障がい者のジャーナリスト、フランク・スウェイン氏(32歳)は先頃、まったく新しい補聴器を開発した。この補聴器は、スウェイン氏がイギリスのチャリティー投資組織「Nesta」の補助金を受けて、音楽アーチストのダニエル・ジョーンズ氏と補聴器メーカー、スターキー(Starkey)社の協力で立ち上げたプロジェクト「ファントム・テレインズ(Phantom Terrains)」の活動で製作したものである。
この補聴器によって、街中のWi-Fiの電波状況を聴覚情報として認識し収集することができるという。Wi-Fi電波の捕捉はiPhoneによって行なわれ、インストールされた新開発のアプリケーションが把握した電波状況を音に変換し補聴器へワイヤレスで伝えるという仕組みだ。
スウェイン氏は実際にこの補聴器を装着してロンドンの中心部を歩き、補聴器によって音に変換されたWi-Fiの電波を“聴き”、そのデータからWi-Fi電波状況をあらわす3次元マップを作成した。データにはネットワークの名称、周波数、信号強度、暗号化方式が表示されているという。確かにこの3次元マップがあれば特定の場所の電波状況がひと目でわかり、電波を求めてさすらう必要がなくなるだろう。Wi-Fiネットワークにはそれぞれ音質が割り当てられ、電波が弱いほどカチッ、カチッと長い間隔で音が鳴り、逆に強まるほどに速いテンポで繰り返し鳴り響くということだ。
「(ロンドン地下鉄の)ターンパイク・レイン駅のホームでは、いつも使っているWi-Fiの馴染みの音が聴こえてくるんだ。そして乗り込んだ電車がロンドンの中心部へ向けて走りはじめると、次第に音は小さく微かになり、まさにトンネルに潜ったみたいに何も聴こえなくなるんだよ。……中略……住宅地はセキュリティが低い家庭用のルーターで満ちているし、一方でビジネス街では高度に暗号化されたワイドバンドのルーターが使われていることがすぐに分かるよ」と、スウェイン氏は「New Scientist」の記事で述べている。
■補聴器の素晴らしさに感銘を受ける
スウェイン氏は20代の頃から徐々に聴覚を失いはじめたという。そして2年前に初めて補聴器を着けたときに、現在の補聴器の素晴らしさに衝撃を受けたのだった。
現在市販されている補聴器はほぼ全てが「デジタル補聴器」である。デジタル補聴器にはマイクロプロセッサが内蔵されていて、音を一度デジタルデータに変換し、個々の利用者に合わせて音質、音量が調整されてから実際に鼓膜へ届けられている。音質の向上と共にノイズリダクションや指向性処理など多機能化が進み、昨今著しい進歩を遂げている機器である。また、スターキー(Starkey)社が今年発売したiPhone連動型の補聴器「ヘイロー(Halo)」は、状況に合わせて音質が自動に切り替わったり、電子メールなどを読み上げる機能があったりと、補聴器の枠を超えた画期的な聴覚デバイスだ。
「現在の私は補聴器を通し、プログラムによって編集された音を聴いている。この事実は私をどこへ連れていくのか? 今後の人生でずっと編集された音を聴くことになるとしたら、そこに私が貢献できることがないだろうか?」というスウェイン氏の考えが、今回の補聴器を開発したプロジェクト「ファントム・テレインズ」を立ち上げる動機であったという。
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2024.10.02 20:00心霊Wi-Fi電波を“聴く”! 難聴だからこそ気づいた「聴覚デバイス」の大いなる可能性とは?のページです。iPhone、IT、仲田しんじ、Wi-Fi、ウェアラブル、聴覚、補聴器などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで