クソッタレな時代に放たれた素晴らしすぎる異臭 ― 写真家・石川竜一「絶景のポリフォニー」2014年木村伊兵衛賞最有力候補者!?
■今そこにあるものを、できる限り受け入れる「絶景のポリフォニー」ステイトメント
このことは、写真展のステイトメントからもうかがい知ることができる。
「この島は、人間の欲と悲しみにふりまわされてきた。だからこそ平和で豊かな南の島を夢見てきたし、そうであろうとしてきた。ただそれは、抑えることのできない欲と、それによって生まれるカオスをいつも孕んでいる。
力強い自然があり、普通と思われる生活があり、楽しいこともそれなりにある。そんななかで作者たちは、解消しようのないフラストレーションを抱えながら、起こるはずのない特別な瞬間を待ち、毎日を、ただ悶々と過ごしている。
当然のことだが、全ての存在や出来事は等価ではない。この世界でそれぞれが全く別のものとして別の価値をもち、主張し合っている。主体となるものや、時間、状況、対象、どれかが少しでも違えば、全てのものが変化し、また全てが同じように揃うことはない。そして、そんな一つ一つのことにほとんど意味はない。全てのことはつながり、そのつながりのなかでだけほんの少し、それぞれに意味が生まれる。
今そこにあるものを、できる限り受け入れること。『研ぎすます』や『無駄を削ぎ落とす』ということは技術的なことではなく、自分の経験や培ってきた概念をできる限り捨て、今この時と向き合うことだ。そうすることで、これまでの鎖から解放され、また新しい『何か』が入ってくる。捨てて捨てて捨てて、今この時に捨てられずに残ってしまっているもの。それが今の自分のどうしようもないクソッタレのアイデンティティに他ならない」(「絶景のポリフォニー」ステイトメント)
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