「つまようじ少年事件」誰もツッコまないマスコミの誤報

■近頃のマスコミは警察発表の情報だけをソースにしていて、自ら動いて裏を取らない?

 つまりマスコミが誤報をしてしまったのは、警察がつまようじ少年のトラップに引っ掛かりそうになってしまった結果かもしれない。近頃のマスコミは記者クラブ向けに行われる警察発表の情報を鵜呑みにして、自ら裏取り取材をほとんどしていないのではないかと思いたくなる。つまようじ少年の部屋に警察が家宅捜索に入ったのが何日かを報道しているニュースはなく、単に「警視庁が家宅捜索を行った」と報じるだけだ。警察が「いつ」を発表しない事案については、眉に唾つけて見聞きした方がいいだろう。

 ちなみに筆者が知り合った逮捕歴のある男は、結構な大事件をやらかして、TVや新聞に大々的に報道されてしまったが、記事が載ったのは逮捕されてから1カ月後だった。どんな裏事情があったかはここでは書けないが、マスコミを通じて発表される警察発表が、いつも最新情報で真実だとは思わない方がいい。

 さて、これに対し、刑事事件に詳しい弁護士からみた見解はどうだろうか?

「結論からいうと、自由に人が出入りできる建物にひやかしで入った人間をすべて建造物侵入罪のみで逮捕することは厳しいでしょう。建造物侵入罪は、他人の看守する建造物等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうとされています。おおざっぱに言えば、今回で言うスーパーやコンビニのオーナーなどが物品の販売以外に予想していない態様で立ち入ることを許さず、刑法犯にするということです。だからといって、警察も冷やかしで入った人間をすべて建造物侵入罪で逮捕しないでしょうし、そもそも逮捕令状の発付についても裁判所が許可しないでしょう。逮捕というのは人身を拘束するものなので、みだりに国民が逮捕されないよう裁判所によって非常に厳格に判断されるのです。つまり、建造物侵入罪で逮捕される場合、多くがその背後に別の重大犯罪が絡んでいるような状況が多いということです。

 つまようじ少年の場合、最初は窃盗などが被疑事実だったと思います。ところが、少年の供述の裏付けを取ってみると『窃盗をしていない』という判断に至ったのでしょう。そうすると、窃盗では逮捕令状が取れない。けれど、そのスーパーやコンビニで何か悪いことをしたことは確実となっている。そこで、とりあえずは容疑が固まっている建造物侵入罪で逮捕したという流れでしょう。では、その背後にある何か悪いこととは何なのか? それは威力業務妨害や偽計業務妨害の罪などだと思われます。要するに、つまようじ少年がスーパーなどに物を置くなど不審な行動をしたため、危険を感じた客の客足が遠のく可能性があるなど、スーパーやコンビニの業務を妨害した罪ですね。つまり、誰でも出入りできるような施設への建造物侵入においては、その背後に何かしら別の重大犯罪があるケースが多いのです。しかし、だからといってマスコミが警察の発表を鵜呑みにし、おそらく断定的には発表されていないことまで、断定的にニュースとして流すのはよからぬ姿勢だと感じます。今はインターネットが普及しているため、被害者側の名前もネット上で特定されてしまう時代なので、しっかりと自分たちで裏取りをして慎重に報道するべきでしょう」
(文=ごとう さとき)

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