運動のことを考えて座っているだけで、筋肉が鍛えられる(米・研究)
引き締まったボディがほしい、でも努力はしたくない――。そんなことを考える人は多いだろう。一昔前に電気刺激で腹筋を鍛えるベルトが流行したのは、そんな人々の思いが具現化したものと見える。
しかし、そういった器具を使わなくても楽に筋肉を鍛える方法があるらしい。オハイオ大学の研究によると、運動することを考えるだけで筋肉を鍛えることができるという。
■考えているだけで運動になる?
昨年行われたオハイオ大学のブライアン・クラーク博士らの研究によると、運動のことを考えて座っているだけで、筋肉が鍛えられるということが明らかになった。
研究班が行なった実験では、29人の被験者を集め、その手首を1カ月にわたって動かせないように固定し、その筋力の変化を調べた。
実験期間中、半分の被験者には固定された手首を鍛えることについてイメージすることを求めた。具体的には、着席した状態で筋肉を動かす想像を、1日あたり11分間で週5日、全神経を集中して取り組んでもらったのだ。その結果、その「脳内エクササイズ」をした人たちは、何もしなかった人々に比べて、手首の筋肉が強くなっていたことがわかったのだ(筋力の低下が半分ほどであった)。
今回の研究においてクラーク博士らは、被験者の脳と筋肉の「回路」の接続状況に着目した。被験者の脳の運動野の上に磁場を作り、脳の運動野を刺激する「経頭蓋磁気刺激法」という方法で、脳の回路接続の状態を検査したのだ。磁場を発生させた際には「皮質沈黙期間」という、筋肉を動かすための電位が一時的に抑制される現象が起こる。この沈黙期間の持続時間を測定することにより、脳の運動野とその伝導路の状態を調べた。
沈黙期間が長く残るほど、運動野と筋肉の結びつきが弱いことを示すのだが、測定の結果、脳内エクササイズをした被験者らは、運動野と筋肉が強い関係を持ち、そのため筋肉を保持できたことがわかった。逆に、何もしなかった被験者らはその結びつきが弱く、筋力も落ちてしまったようだ。
■運動の代わりになる“脳内エクササイズ”
実は、今回の研究のアイデア自体は新しいものではない。神経科学の分野では、脳と身体は共に進化してきたと考えられており、脳や筋肉が独立して機能しているように見えても、実際には緊密な関係があるとされてきた。
実際に、10年前にも既に同様の研究が進められており、全米有数の病院であるクリーブランド・クリニックにおいて、脳内エクササイズが指の筋肉を35%強化したという報告があった。また、5年前にも、ワシントン大学でも、脳内エクササイズによって実際のエクササイズで活動する脳の部分と同じ部分が活動していると発表している。
今回の研究はこれらの研究結果を補強し、運動における脳と筋肉の連携について確かな知見をもたらしたと言えるだろう。
運動不足や加齢などで筋肉が衰えるのは必然であり、それに対して脳内エクササイズだけで対応可能かと問われれば、それは否である。しかし、楽して最大の効果は得られないの当然として、運動できないような状況でも運動のことを考えるのは無駄ではないことを覚えておいて損はなさそうだ。
(文=杉田彬)
参考:「Scientific American」、「Journal of Neurophysiology」ほか
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