「彼の家に嫁ぎます」英国在住のゲイボーイが語る同性婚と差別問題
■LGBTが抱える家族との葛藤
日本のゲイの友人は「親には絶対言わない」って人が大半ね。「心労をかけたくない」って言うの。(私、占いをやってるんだけど)私のところに、占いの相談に来られた方もそうおっしゃる方が多いわ。これに関しては、各ご家庭の事情があるでしょうから私は何も言いません。ご本人が「生きやすいようになさったら」って言うだけ。だって、言うも言わないも、個人の自由でしょ。アナタが2つの仮面を被って、昼と夜、居間とベッドルームで違う生活を送っていたとしても、それは個人の自由。誰もが尊重するべきことよね。
■ジュージーのカミングアウト
私は両親に19歳の時にカミングアウトをしたの。もう渡英していたけれど、ハッキリと自分が“そう”だって気がついたのはこっちに来てからだったのよ。初めてゲイの友達ができて、ロンドンのゲイクラブへ行ったりするうちに「もう受け入れて生きていこう」って思えたの。そして、親に隠し事をしたくなかったから、カミングアウトすることに決めたのよ。
当時はメールなんて普及していなかったから国際郵便で父と母に手紙を書いたわ(笑)。それから2週間ほどして大学の寮に2通の手紙が来たの。父と母が別々に返事をくれた。どちらも「お前の生きたいように生きなさい。いつまでも私たちの子どもに変わりはない」って言ってくれたのよ。ずーっと気を張り詰めて慣れないイギリスで大学に通ってて、勉強では弱音を吐かなかったし泣きもしなかったけど、この時だけは号泣したわ。本当に理解ある両親に出会えて私は幸せよ。
■同性婚でやっと認められる永住権
私たち外国人がイギリスに長く住むにはどうしても居住権の問題が出てくるわ。私は渡英3年目にイギリス人の彼ができました。当時は学生ビザで4年の滞在しか認められていなかった。あと1年位で日本へ帰る予定だった。でも彼が「一生添い遂げたい」って言ってくれて、私の永住権発行手続きの準備を始めてくれたの。
当時は4年間同棲していることが認められると「内縁の伴侶」として「パートナーシップ・ビザ」と言うのがおりたのよ。その後無事に4年間同棲し、私はそれを手に入れました。そしてさらに2年後、それが「永住権」に変わったわ。
■いよいよ嫁ぐ日がやって来たわっ!
そして30歳目前の2004年に「シビル・パートナーシップ」制度が発布され、8年間付き合ってきた私達の目の前にも「結婚」という文字がチラつき始めたわけ。私は結婚なんてただの紙切れの問題だと思っていたしどうでもよかったんだけど、法的に認められると解消できる問題も多かったので結婚をすることにしました。
きちんと白いタキシードを着た彼が、右膝を付いてプロポーズしてくれたわ(実はその前に彼のお母さんから内密に、息子と結婚してください、って頭下げられてOKしてたんだけどね(笑))。
そして私も、結婚の意思を伝えるために日本の家族に電話をしました。
「長い間お世話になりました。嫁ぎますっ!」ってね(笑)。
すると、今まで彼のことも認めてくれていた父が大激怒しちゃったの!
「結婚は異性間のもので、お前らには必要ないだろう! 何でいまさら「普通」を求めるんだ!」ってね。法的に必要なのよ、って説明しても「結婚=異性間の制度」っていう概念が抜けなかったみたい。電話口で大喧嘩になって、結局私は勘当されちゃったの。
母に代わってもらって報告したら「おめでとう。幸せになりなさい。でもお母さんはお父さんの言うことに従うわ。だってそうじゃないとお父さん可哀想でしょ? だから結婚式にも出られないし、あなたにもいつ会えるか分からない。だけどいつまでも大事な息子だからね、頑張るのよ」って言ってくれた。また泣いちゃったわ。
勘当されて、私側からの列席者はないまま結婚式の準備をしました。先ほど話した姑が大乗り気で、実家でのパーティーを用意してくれたり、式場の手配なんかもやってくれたわ。イギリスの家族が助けてくれたわけ。
それから3日後、父から電話がありました。「式はいつなんだ? 4人で行くからな」って。妹2人も連れて、はるばるイギリスまで来てくれるんだって。「落ち着いて考えたんだ、お前の幸せか、自分の価値観かって。父さんが間違ってた。母さんに説得されたよ、あいつがいつも正しい」ってね。それでまた号泣したわ。
そして式の前日、日本から家族が到着し、式は両家親族に友人も含めて盛大に行わせて頂きました。本当に幸せでした。
だけどね、いざ結婚をしてみたら私と彼の中で何かが「プッツン」と切れてしまったの。マリッジ・ブルーって言うんじゃなくて、達成した後の虚脱感って言うのかしら。今後どうしようか、みたいな話をしていくうちに、お互いの未来予想図が一致しないことに気づき始めたの。それから3週間後、遠野なぎこ的電撃離婚をし、「ご祝儀返せ」って皆に言われたわ(笑)。でも円満離婚だったので、元旦那とは今の彼も含めて会っています。
■これからの同性婚
もちろん自分たちの権利が認められるわけだから、イギリスではほとんどのLGBTが同性婚を歓迎しているわよね。続々と結婚するカップルが増えてきているし、結婚することでビザが得られるので外国人の相方と別れ離れにならなくて済むし、バラ色一色って感じ。でも、結婚ってLGBTにとっては今までにはなかった概念でしょ? だから同性婚が広がるのは歓迎だけど「自分は、結婚なんてしたくない」って考えている人も多いるのは事実よ。同性婚の制度があるから別れた友人カップルもいるわ。相方に結婚をせがんだら「これまで通りでいいじゃないか」って言われて「アタシとは結婚したくないわけっ!」って別れたりね。これは異性でも同性でも同じ問題よね。結婚が本当にそのカップルにとって必要なのかどうかは、わからないってこと。でも、結婚できる権利はやっぱりほしいわよね!
■ジュージー・エレガンザ
ロンドン在住の30代ゲイボーイ。B型・いて座で、相方はイタリア人ファッションデザイナー。ロンドン大学で美術史と考古学を学んだ後、モデル、俳優、国際線キャビンクルー、ジュエリーデザイナー、旅行会社勤務等を経て、現在はフリーランスライター。英国スピリチュアル協会およびスピリチュアルヒーリング協会会員。得意分野はスピリチュアル・オカルト・ファッション・アート・骨董・歴史・フード・旅行など。
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2024.10.02 20:00心霊「彼の家に嫁ぎます」英国在住のゲイボーイが語る同性婚と差別問題のページです。ジュージー・エレガンザ、LGBT、同性婚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで