蚊の目玉スープは実在するのか? オカルト研究家が「世界の怪食伝説10」を検証!【前編】

■蚊の目玉スープは実在するのか

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 あらゆる食を追求する中国料理の中でも、屈指の珍品とされるのが、世界一小さな食材、蚊の目玉です。採取方法は、地獄鍋に匹敵するほどロマン溢れるもの。
 
 それはずばり、コウモリの糞。コウモリは蚊を好んで食べるため、中国では「蚊喰鳥」と呼ばれています。しかし、キチン質である蚊の目玉だけは消化されないので、糞に混じって排出されてしまう。そこでコウモリの糞から、ちまちま気の遠くなる作業を経て、目玉だけを取り出すというのです。そんな貴重な食材をふんだんに使った「蚊の目玉スープ」は、何十万円もする高級料理として、極限られた時にだけ提供されるとか。また「夜明砂」という目に効く漢方薬としても売られているようです。

 しかし、珍食ハンターである農学者・小泉武夫は、これを「つくり話」としております。スープに浮く黒い小さな物体は、実は小エビの目玉なのだというのが彼の見解です。さすがに蚊の目玉を採取するのは無理なのでしょうか。
 
 ところが先日。珍食を好む僕の知人、アイソ氏から「蚊の目玉を見た!」との情報を得ました。某中華料理屋にて、蚊の目玉のビン詰めを拝見させてもらったそうなのです。その写真がこちらです。

 コウモリの糞に混じってキラキラとした粉が点在しているのが分かります。小泉武夫の小エビの目玉説では「黒く微細な目玉」と記されていますが、こちらは銀色のラメのような質感。もしかして、本当に蚊の目玉なのかも……?
 
 そんな期待も膨らみますが、いずれにせよ漢方薬として使うものなので、料理には向かないらしいです。アイソ氏は、店主からすげなくこう言われたとのこと。

「スープにしてもいいけど、コウモリの糞がメインだから土臭いだけだよ!」

結論:食材としての「蚊の目玉」があるどうかは微妙。調査継続中。


■熊の右手はハチミツ風味

 同じく中国料理からロマン溢れる食伝説をもうひとつ。

 その昔、熊は冬眠中、右手にハチミツをたっぷり付けていると言われていた。それを時々舐めながら、穴の中でカロリー補給しているのだ。だから熊の右手はハチミツ風味がして美味なのだという……。
 
 これまた怪奇な言い伝えです。「熊の手」は実際に流通しているものですが、果たして真実なのかどうか。
 
 前述の中華料理屋さんでは熊の右手・左手ともに取り扱っているそうです。両手を食べ比べてみれば、味の違いが分かるのではないか? アイソ氏が店長に真偽のほどを尋ねてみたところ。

「そんな訳ない」

 キッパリ否定されたそうです。右手と左手で、味の違いなど全く無いらしい。

「手にハチミツの味が移るっていうんなら、それより土の味の方が強いはずでしょ」(店長談)

 確かに、普段は四足歩行しているのですから、地面の土や落ち葉の方がよっぽど手(前脚)に染み込んでいるはず。さんざん食べたり、調理したりしている人が断言しているのだから、この怪食伝説はデマと判断していいでしょう。

結論:ハチミツ味も土の味もしない。


■ヒトの胎盤を食べる

 ちょっとエグい話ですが、出産後の胎盤を食べる人もいるそうですね。なんでも産後の肥立ちがよくなる上、たいへん美味なのだとか。僕の周りでも、実際に食べてみて美味しかったという体験談を聞いたことがあります。
 
 お母さんが自分の胎盤を食べる分には「体の一部」だから抵抗も少ないでしょう。しかし世の中には、誰のものか分からない胎盤も食品として流通しているというのだから驚きです。

 それを食べてきたのは、またもアイソ氏。乾燥させた胎盤をスープで戻し、味を付けたもので、見た目はホルモン焼きのハチノスのようだったとのこと。そして、噂と違ってものすごく不味かったと漏らしていました。味はボソボソ、食感も最悪だったらしく

「なんていうか、大きなカサブタを食べている感じ」

 と、吐き気のする例えによって説明してくれました。どうも素材そのものというより、保存技術の悪さによって、味が劣化してしまったようです。つまり「新鮮な胎盤なら、もっと美味しいはず!」というのがアイソ氏の考え。そうはいっても、産んですぐの胎盤を食べさせてくれる妊婦さんというのも、なかなかいないでしょうけど。

結論:新鮮な胎盤は美味いが、古いものはたいへん不味い。

後編は3月4日14時に配信予定

■吉田悠軌(よしだ ゆうき)

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怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談やオカルトを「隠された文化」として収集・研究している。著書に『放課後怪談部』『ホラースポット探訪ナビ: 日本全国のヤバイところに行ってきた!』(学研パブリッシング)。編集長を務める同人誌『怪処』ではオカルト的な場所を広く紹介。
 
怪処HP

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