幽霊が出るという噂は本当か? B級観光スポット「東京湾観音」
先に説明した仏像の数々に混じり、東京湾観音の制作者である宇佐美政衛氏や、像の原型を制作した長谷川昴氏の紹介文が置かれている。それを読む限り、どうやらこの像は、東京大空襲で東京湾一帯が火の海に包まれて多くの人が犠牲になったのを目の当たりにした体験から、宇佐美氏が世界平和と第二次世界大戦の戦没者の供養を目的として建立したもののようだ。そう考えると、マリア観音も、仏教にとらわれずに世界平和を祈願し、戦没者たちを悼む志の表れといえるのかもしれない。
道中にはほかにも、景色を覗くための穴がある。ネットには、以前はこの穴から飛び降り自殺をする人が続出し、それゆえに心霊スポットになったというような情報が多くの場所に書かれていた。現在は穴に転落防止用と思われる柵がついており、噂に真実味を与えている。だが、この施設に20年勤めているという女性に噂が事実なのかを確かめたところ、そんな話は聞いたことがなく、あくまでも噂ではないかとのことだった。同じく設置されていた資料によれば、この施設が完成したのは昭和36年とのことなので、女性が勤める以前に何か起きたという可能性もないわけではないが、噂の信憑性はそんなに高くないといえそうだ。
一通り見て回った後、併設されている売店へ。食品やキーホルダーなどの、一般的な土産物屋というべきラインナップだが、店の一角に置いてあるガチャガチャには、仏像コレクションというニッチな品が置いてあった。一体どういう層がこれを欲しがるのか。信心深い老人が買うとも思えないし、子供に与えても喜ばないだろう。あるいは、ネタとして買う人がターゲットなのだろうか。
最後に東京湾を眺めて帰る。晴れた日はうっすらと富士山が見え、まさに絶景だ。宇佐美氏は、あくまでも大真面目にこの施設を作ったのだろう。しかし、あまりにもインパクトの強すぎる見た目に加え、トランスレリジョンな施設を目指した結果として制作されたであろうマリア観音の怪奇さなども相まって、いつしかB級スポットと成り果ててしまったのだろうか。
その上、世界平和や戦没者の供養という立派な目的のために建立したはずのこの観音像が、覗き穴からの自殺が続出したという情報(前述した通り、恐らく噂にすぎない可能性が高いが)により、心霊スポットとしても扱われているような現状は、宇佐美氏も草葉の陰で忸怩たる思いを抱いていることだろう。軽い気持ちで訪れたこの場所で、こんなセンチメンタルな気持ちになるとは思わなかったが、一人の男が純粋に世界平和の祈りを形にしたモニュメントとして考えれば、十分に訪れてみる価値がある施設だといえるのではないだろうか。きっと何か感じ入るものがあるはずである。
(文=阿左美UMA)
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