自殺した家族の死を乗り越えることができない…自死遺族の声と心の傷とは?

 内閣府自殺対策推進室と警視庁の調査では、平成26年の我が国における、自殺者数は25,427人であったことが報告された。前年に比べると1,856人の減少となったが、依然として、多くの方が亡くなっていることに変わりはなく、自殺の実態に即した対策の推進と強化を図ることや、身近な人を自死で亡くした遺族の悲しみや苦しみをケアする支援が必要だ。

 しかし、自殺を「特殊な死」「弱者の死」などとする偏見やタブーが世間から完全になくなったわけではなく、残された家族は人知れず苦しみを抱えたまま生活しているという現状がある。その「自死遺族」の気持ちに向き合ったのが、23日に放送された『ハートネットTV 生きるためのテレビ “自死遺族”の声から』(NHK Eテレ)だ。息子を自殺で亡くした、ノンフィクション作家の柳田邦男氏、夫を肝臓がんで亡くしたことをきっかけに生と死を考える活動に携わったNPO全国自死遺族総合支援センター・代表の杉本脩子氏らが出演し、自死遺族とともに、この問題について向き合った。

自殺した家族の死を乗り越えることができない…自死遺族の声と心の傷とは?の画像2credit:bixentro/from Flickr CC BY 2.0から

■弟を亡くしたあかねさんのケース

 あかねさんは仲の良かった弟(26)を自死で亡くした。遺書には、「迷惑をかけてごめんなさい」「彼女のせいではありません」という短いメッセージが残されていたが、それ以上の理由については触れられていなかった。そのため、恋人と幸せに暮らしていたはずの弟がなぜ死を選んだのか? 日常のふとした出来事から弟の自殺理由について、想像をめぐらしては自責の念に苦しんでいるという。

■母親を亡くしたりんさんのケース

 りんさんはうつ病を患っていた母親を自死で亡くした。生前、情緒不安定だった母は、りんさんや妹にひどい言葉を浴びせていたことから、大学進学を機にりんさんはひとり暮らしを始めた。そして、母親からの電話やメールが来ると、ことごとく無視し続けた。

 それからしばらくして、母親は自ら命を絶った。りんさんは「母を父と妹に押し付けた」「電話で話を聞いてあげていれば……家を出なければ……」と後悔し、その影響でうつ病になってしまう。現在は精神科に通院する場合を除いて外出はせず、引きこもりのような毎日を送っている。りんさんはそのことについて「母を死なせてしまったことへの罰であり、(引きこもりは)刑務所にいるようなもの」だと考えているという。

 第三者から見れば、あかねさんやりんさんが責任を感じて自分を追い込む必要はないように思われる。しかし、いくら「あなたに責任はないよ」と言い聞かせたところで、残された遺族の心の傷は癒えない。

 あかねさんは自死遺族についてこう語る。

「弟のことを思い出すと、場をわきまえずに泣きたい気持ちにもなるが、それでは生活が成り立たなくなってしまうため、自分の気持ちにふたをしてしまうことが多い。だけど、話を聞いてもらい共感してもらうことで、気持ちは楽になる」

 現在、自死遺族については自治体や自助グループによって支援が行われているという。孤立してしまいがちな彼ら自死遺族が生きやすい社会をつくるためにも、こうした番組を通じて、理解を深める機会を増やすことが大切だ。
(文=近添真琴)

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