ホラー映画『ソウ』で【封印】された地下鉄サリン事件!?
■伝説的人気を誇るホラー映画が封切られる
ジグソウと名乗る猟奇殺人鬼により、いつのまにか理由もわからず密室に閉じ込められた他人同士が、わずかなヒントと道具を頼りに「死のゲーム」を強要させられて次々と死んでいくサスペンス・ホラー。毎回異なる趣向を凝らした殺人ゲームと、フィギュア化されるほどの人気を得た殺人鬼・ジグソウにより作品は大当たり、2004年から2010年まで全7作、きっちり1年ごとに新作が製作され、『ソウ』は人気シリーズとなった。
シリーズは全作において、その残酷さから各国でレイティング(年齢制限)が設けられたが、2005年の第2作『ソウ2』(日本ではR15+指定=15歳未満鑑賞禁止)の公開において、2つの大きな問題が発生した。
出口のない洋館に幽閉された男女8人は、ゲーム開始と共に館内に充満してくる毒ガスから逃れなくてはならない。2時間以内にゲームに勝ち残り解毒剤を入手しないと、その毒ガスで死んでしまうというルールだ。そしてジグソウの逮捕に成功した刑事が、自分の息子もゲームに参加していることを知り、愕然とする……。
まず、切断された2本の指でデザインされたポスターが過激すぎるとクレームがついた。そしてMPAA(アメリカ映画協会)の通告により、製作・配給のライオンズ・ゲート・フィルムは、全米の劇場からポスターを自主回収し、無難なデザインに変更している。
そして、劇中にメインで登場する毒ガスについて、「Tokyo Subway Attack(東京地下鉄攻撃)で使用された毒ガス」という台詞が出てくる。つまり「サリン」だが、日本公開時の字幕及びDVDの日本語吹き替えから当該台詞が削除された。また、あまりの残酷さから多くのシーンに削除と修正が加えられ、さらに日本公開時は残酷シーンの画面を暗くする処置がとられた。
被害者に対する配慮が欠けていたのは、日本の犯罪史上最悪の事件であっても、異国のアメリカからすれば「対岸の火事」。しかも広大な太平洋を挟んだ対岸だ。遠い国での出来事に過ぎないのだろう。
ちなみに、続く『ソウ3』はさらに過激な残虐シーンが盛り込まれていたため、MPAAからかなり手厳しい指導を受け、数カ所にカットや修正が施され、「R15+指定」で公開に至った。DVDでは、無修正のオリジナル・バージョンが収録されているという。その後シリーズは、第7作目にして初の3D映画『ソウ・ザ・ファイナル 3D』でGAME OVER(劇中のお約束台詞)を迎えた。
(文=天野ミチヒロ)
■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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2024.10.02 20:00心霊ホラー映画『ソウ』で【封印】された地下鉄サリン事件!?のページです。ホラー、Saw、ジグソウなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで