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発言を逆再生すると“無意識の声”が聞こえてくる!? 嘘発見器として犯罪捜査にも活用された「リバース・スピーチ」の謎

2015.05.23 12:00

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■反転メッセージの検証

発言を逆再生すると無意識の声が聞こえてくる!? 嘘発見器として犯罪捜査にも活用された「リバース・スピーチ」の謎の画像3

　それを検証したのがオーストラリアのデイヴィッド・ジョン・オーツ氏である。1983年、オーツ氏は楽曲のジャンルや年代に構わず、実際にレコードを片っ端から何百枚と逆再生してみると、驚くべきことに楽曲の約半数から意味を成す「不可解なメッセージ」が聞こえてくることを発見したのだ。それは、ビートルズがバックマスキング技術を利用する以前の楽曲からも発見されただけでなく、ロック音楽以外の楽曲からも発見された。つまり、いつの時代においても、常に一定の割合であらゆる楽曲から反転メッセージが見出されたのだ。そして、バックマスキングが施された楽曲においては、人為的な編集の跡が明瞭に聞き取れるのに対して、バックマスキングが施されていない楽曲においては、編集の跡はまったく見られないという事実もオーツ氏は発見したのだった。

　つまり、レッド・ツェッペリンもAC/DCもジューダス・プリーストもバックマスキングのような編集を行っておらず、まったくの無実だったのだ。また、サブリミナル効果を利用して若者をマインドコントロールしようとしたという陰謀論も事実無根だったと言える。

　これをさらに決定づける重要な発見をオーツ氏は行っている。それは、音楽という垣根を超えて、ヒトの会話やスピーチを録音し、逆再生すると、やはり意味を成す言葉が聞こえてくるという衝撃的な事実である。この不思議な現象をオーツ氏は「リバース・スピーチ」と命名。これが著名人の歴史的なスピーチを検証するきっかけを与えたのだった。そして、リバース・スピーチとは、なんとなくそのように聞こえるという空耳現象とは異なり、その内容は発言者の無意識を反映しているのだとオーツ氏は主張する。

■大統領の本心が露わにされた!?

　では、ここでさらに具体例をみてみよう。

・オーストラリア元首相の「リバース・スピーチ」

　オーストラリアの元首相ボブ・ホーク氏は、1987年の連邦選挙に勝利した際、どのように当選を祝うか記者に質問されて、

「そうですね、数杯の紅茶を飲んで祝いますよ(Well, several cups of tea.)」と答えたが、その逆再生では、
【Used to smoke the best marijuana（かつては極上のマリファナを吸ったものだ）】

　…と、話していた。

・ジョージ・W・ブッシュ前大統領の「リバース・スピーチ」

発言を逆再生すると無意識の声が聞こえてくる!? 嘘発見器として犯罪捜査にも活用された「リバース・スピーチ」の謎の画像4

画像は、ジョージ・W・ブッシュ「Wikipedia」より

　2002年6月、ジョージ・W・ブッシュ前大統領は、「我々は多くの慢性疾患の予防・発見・治療に大きく前進している。これはアメリカにとって素晴らしいことだ。心臓病、ガン、糖尿病の（医療）現場は良くなってきている」とスピーチしたが、その裏では、

【See the bad nurse make disease（ダメな看護師が病気を作るのを見たまえ）】

　というリバース・スピーチを発していた。

　このように、リバース・スピーチは、決して不可解なメッセージではなかった。発言者の無意識を反映しており、多くの場合、本音を露呈させるものなのだ。ブッシュ前大統領のリバース・スピーチに関しては、病気は看護師次第という個人的な思いが反映したものと思われる。

　仮にリバース・スピーチ現象が空耳の場合、表での発言内容とは無関係な言葉が脈絡なく現れるはずである。ところが、現実はそのようにならない。そればかりか、本来なら逆再生によってこのような音（おん）として聞こえるはずだという法則を無視して現れる。それは、リバース・スピーチが発生した個所に注目して、発言者の喋り方と似せて、実際に声を出して録音・逆再生してみるとわかる。リバース・スピーチが発生するような喋り方を誰でも再現できれば、それは偶然に生成されたものだと言えようが、どう頑張っても再現できないような場合は、リバース・スピーチだとわかるのだ。

　このようなことから、リバース・スピーチは究極の嘘発見器になりえるとして、アメリカやオーストラリアでは実際に犯罪捜査に活用され、事件解決に貢献してきた。発言者の表での発言内容と、裏（リバース・スピーチ）での発言内容が一致すれば、発言者は真実（本音）をありのままに語っていることになるが、食い違えば、表ではウソを、裏（リバース・スピーチ）では真実（本音）を語っていることが分かるからである。例えば、偽って事件への関与を否定する人物の発言を逆再生すると、その真偽は見えてくるため、容疑者を絞って、警察側の捜査を助けることができる。また、冤罪防止にも役立つのだ。

　リバース・スピーチによって発言者の無意識を窺い知ることができることから、その応用範囲は広い。何らかの決断に迫られた人にとって、自身のリバース・スピーチを知ることができれば、顕在意識による理性的な判断よりも、深層意識での判断を優先することができる。無意識の声を聴くことで、病気やトラウマの原因を突き止めることにも役立つ。実際のところ、オーツ氏はリバース・スピーチをビジネスコンサルティングやセラピーに効果的に活用しているのだ。

　さて、一部のロック音楽の逆再生で聞こえてくる悪魔的なメッセージとは何だったのだろうか？　これもボーカルの無意識が反映した結果であると考えられるのだが、本音というよりも、ひょっとしたら何者かが憑依してそう喋らせていた可能性もあるのかもしれない……。
（文＝ケイ・ミズモリ／サイエンスライター）

　次の記事では、リバース・スピーチの日本語版を紹介しよう。小保方さんの本音が聞こえてくるのだ！（リバース・スピーチ後編は5月24日12時配信予定）

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