「私はただそこに行き、自分の目で見てから判断したい」写真家・佐藤健寿が語る都市伝説とは?

「私はただそこに行き、自分の目で見てから判断したい」写真家・佐藤健寿が語る都市伝説とは?の画像1※イメージ画像:『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』著:佐藤健寿/河出書房新社

 世界各地で目撃されている未確認飛行物体(UFO)。形状は円盤型・葉巻型・ピラミッド型・ドーナツ型・クラゲ型など実に多岐にわたる。しかし、いくら目撃されようとも未確認の文字は外れることなく、声高らかに存在を主張する愛好家らを冷めた目で見る人も少なくない。

 だが、彼らは何を持ってその存在を否定するのだろうか? この度、webサイト「X51.ORG」の主宰として知られる佐藤健寿氏が上梓した『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』は、著者がエリア51やロズウェルなど、UFO研究の聖地とも言える場所に実際に赴き、膨大な資料と徹底した現地取材を行い、自身の目で“事実”を再検証した1冊だ。


■エリア51にあったもの

 アメリカ空軍が管理しているネバダ州南部にある「エリア51」。子供の頃見た映像の中にあった思い出の地を著者は訪れる。

「看板まで来て、周囲を見渡すと、そう遠くない丘の上に、1台の車が停車しているのが目に入った。車体は真っ黒で、ナンバープレートは見えない。(中略)私はすぐにピンと来た。そう、これがかの有名な”Camo dude”(エリア51を警備する謎の集団)なのだ。(中略)しかし彼ら”Camo dude”は律儀にも、台本どおりに黒いジープに乗り、丘の上から見下げるようにして、私を迎えてくれたのである。世界に名を知られた矢追純一ならばともかく、私のような素人紛いさえ待ち受けてくれるとは……。私は驚きも半ば、それよりもこの厳重な警戒態勢に早くも興奮を覚えた。それはまさに、かつてテレビで映し出されていたような光景であり、私はその時、矢追さんだったのだ。」

 エリア51という謎深き真っ暗闇な場所を守る”Camo dude”を見たときの「私はその時、矢追さんだったのだ」という言葉が、筆者の興奮を物語っている。かつて、この地で黒ヘリに追われた矢追純一と自分を重ね、「もしかしたら」と期待を馳せていたのだろう。

 しかし、エリア51で結局、看板や”Camo dude”の車を撮影することしかできなかった。

「ジープのエンジンは恐ろしいうなり声を挙げて目の前に大岩が迫る――時間にすれば1分ほどの出来事だっただろうか、最後は何かと激しく衝突して、車はようやく停止したのだった。「終わった」――私はほとんど目を閉じたままドアを開け、そのまま車の外に倒れこむと、砂漠の静寂の中で、自分の激しい心臓音だけが聞こえた。(中略)私は生きていたというよりも、死んでいなかった、という程度に、自分の生を確認することだけで、精一杯だった。汗とも、血とも、涙ともつかないものが目に染みた。」

 憧れのエリア51に行き、精神が昂っていたのかもしれない。見るだけ見て帰ろうとした途中で死ぬなど、調査をする者にとっては笑い話だ。「汗とも、血とも、涙ともつかないものが目に染みた。」という一文が、彼の悔しさや窮状を物語っている。これは、ここで死ぬ事に対する悔し涙なのか、額から流れる血なのか、冷や汗なのか…。

「しかしもしもここで私が死亡していたら、(中略)日本のUFO界永遠の謎としてエリア51に散ったX51という名が語り継がれていたかもしれないと思うと、いささか惜しいことをしたような気分ではある。」

 冷静になったとき、著者は事故をこのように振り返る。彼は謎を追うものとして、自らが謎になることをも望むというのだろうか。しかし、それはある意味で至高なのかもしれない。


■陰謀論が陰謀論を呼ぶ

 世の中にはまことしやかに囁かれる陰謀が多数存在する。著者は陰謀論に対し、本書にて、

「「新たな事実」が付け足され、「古い事実」が否定されている。そして「新たな陰謀」がささやかれると同時に、今度はそれ自体を政府のブラフと見る「真の陰謀」が生まれる。」

 と、語る。陰謀論とは先にあった事実が、覆された瞬間に生まれるものなのだろう。エリア51にしてみても、軍の飛行訓練場であるということが否定され、その後「ここはエイリアン研究を隠匿するための場所」という陰謀論が生まれた。

 そしてこれは、無限にループしていくのかもしれない。そうだとすれば、陰謀論というのは人々が思っているよりも、いい加減なものな気もしてくる。

■ロズウェルに堕ちた物体は現代のプロメテウスか

「1947年7月、ロズウェルに堕ちたもの――それはまるで変幻自在で掴みどころがなく、見る者の望む姿を見せる、現代のプロテウスだったのかもしれない。そして今後もまた信奉派と懐疑派、米軍や証言者のけたたましいやり取りの中で、その正体の見えぬ「何か」は、ゆるやかにその姿を変化させながら、生き延びていくことだろう。騒々しい周縁の、その中心は、ただ寡黙なままに――。」

 ロズウェルに堕ちたものがUFOなのか、それとも気球なのかといったことは、議論を行うとキリがない。気球であるという説も、後付設定のような整合性がないようにも思える。また、UFOであるというのも、興味の無いものからすれば荒唐無稽だ。

 しかし、気球だと述べる人は確実にそれを気球だと信じ、UFOだと述べる人も確実にそれをUFOだと信じている。人間は、事実とは違っていても見たいものを見てしまう事がある。星座はその人の望むものを映し出すというが、それと同じ現象が、ロズウェルUFO墜落事件でも起こっているのかもしれない。

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