異型のモンスターが暴れまくる! 伊丹✕黒沢の名作『スウィートホーム』はなぜ封印された?

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!


【今回の映画『スウィートホーム』】

異型のモンスターが暴れまくる! 伊丹✕黒沢の名作『スウィートホーム』はなぜ封印された?の画像1画像は、『スウィートホームへ連れてって』(東宝)

 俳優として確固たる地位を築きながら、晩年は映画監督・プロデューサーとして類まれなる才覚を発揮した伊丹十三。1997年の夕刻、伊丹は港区にある事務所マンションに隣接する駐車場で遺体となって発見された。警察は「飛び降り自殺」と断定したが、その真相は現在も謎に包まれている。写真週刊誌の不倫疑惑報道に対する抗議の自殺説。作品の題材である暴力団や宗教団体による謀殺説。初老期鬱病による自殺説など、諸説が飛び交った。

 そんな伊丹の作品は夫人・宮本信子をメインキャストに据え、『お葬式』(84年)、『タンポポ』(85年)、『マルサの女』(87年)、『ミンボーの女』(92年)と次々にヒットを飛ばした。この輝かしい伊丹十三のフィルモグラフィーの中にあって、現在DVD化もテレビ放送もされない作品が、ホラー映画に挑戦した『スウィートホーム』だ。

 伊丹十三は総指揮に立ち、監督は彼が1985年に出演した『ドレミファ娘の血は騒ぐ』の駆け出し監督・黒沢清。伊丹は黒沢を天才と称し、浅いキャリアにもかかわらず抜擢したのだ。後に作品を巡って争う結果になるとは露知らず……。

 伊丹が目指したものは、旧態依然とした特撮技術(個人的には、これはこれで人形浄瑠璃のような伝統芸として最大評価する)ではなく、ハリウッドの最新SFX(当時、Special Effectsをもじった造語)を導入した日本版『ヘルハウス』(73年・英)だった。

 『ヘルハウス』とは、70年代に流行った「家ものオカルト映画」の代表作で、日本にも大林宣彦の『HOUSE ハウス』(77年)という怪作があったが、さらにその先を目指したのが『スウィートホーム』だ。

■『スウィートホーム』あらすじ

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