英版“ネトウヨ”新聞?エリザベス女王がナチス式敬礼写真掲載でみる英の新聞事情
イギリスの大衆紙「THE SUN」が、エリザベス女王が幼少期にナチス式敬礼をする写真を掲載したことが話題となっている。女王の年齢は7歳前後とされ、撮影時期は1933~34年である。原本は映像フィルムであり、webでは動画も公開されている。1933年は、ヒトラーがドイツ国首相に任命された年。いわばヨーロッパにとっては、悪夢の始まりの年ともいえる。
スクープを掲載した「THE SUN」は、発行部数300万部を超える大衆紙で、下世話な編集スタンスで知られ、芸能人や王室のゴシップが多く掲載される。また、3面を飾るヌードグラビアも名物であり、主に労働者階級に読まれている新聞だ。
イギリスは階級社会が現在も根強く生きており、階級ごとに読む新聞も決まっている。
「イギリスには大きく分けて上流、中流、労働者と3つの階級があります。さらに政治は保守党と労働党の二大政党制です。階級と支持政党によって、読む新聞もはっきりと区分けされています。さらに、新聞の形式もブランケット版(高級紙)とタブロイド版(大衆紙)に分かれています。ブランケット版は、日本で言えば『朝日新聞』『読売新聞』などの大判の新聞、ブランケット版は『日刊ゲンダイ』や、『夕刊フジ』などの大判の2分の1のサイズの新聞です」(海外の新聞事情に詳しいジャーナリスト)
一般的に中流階級の上位層は、ブランケット版の高級紙を読むとされる。中流階級の下位から、労働者階級はタブロイド版の大衆紙しか読まないことが多い。さらにイギリスの新聞は日本のような戸別宅配制度はなく、駅のスタンドなどで購入する。日本のスポーツ新聞や夕刊紙のように、その日の一面トピックによって買う新聞を変えることもある。
「『THE SUN』はEUに対して批判的なスタンスで知られ、フランスやドイツの著名人を風刺する記事を多く掲載しています。イギリスへやって来る移民や難民へも批判的です。素朴なナショナリズムを煽るイギリス版“ネトウヨ”新聞と言えるかもしれません。橋本龍太郎が日本の首相を務めていた当時に、『THE SUN』を高級紙と勘違いし、第二次大戦中の日本軍によるイギリス人捕虜の扱いをめぐって謝罪コメントを寄せる珍事もありました」(前出・同)
高級紙には政情や国際情勢を解説する分析的な記事が載る一方、大衆紙は事実を拡大解釈し煽るような記事ばかりが載る。大衆紙だけを読んでいれば視野や価値観が狭くなることは想像に難くない。イギリスにおいて階級を移動するには大変な困難が伴うとされる。新聞の発行事情ひとつとっても階級が深く影を落としているのだ。
(文=平田宏利)
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