哲学的自殺の可能性はあるのか? 小4男児の不可解な首吊り事件とシュタイナー教育
■シュタイナー教育とは
そもそも、男児は地元の公立学校には通わずに、NPO法人が運営するフリースクールに通っていた。このフリースクールは、シュタイナー教育を実践していた。シュタイナー教育というと、教科書を使わない、テストがない、あるいは芸術的な教育実践がイメージされる。こうした教育モデルを作った「シュタイナー」とはどんな人物だったのだろうか?
ルドルフ・シュタイナーは1861年2月、オーストリア帝国(現在のクロアチア)に生まれた。ゲーテの研究者として注目をあびていたが、1900年代からは神秘学の結社「神智学協会」に所属。霊能力があったとも言われ、物質的な世界を超える、霊的な世界に関して語るようになっていったが、その後、方向性の違いから協会を脱退。12年にアントロポゾフィー協会(人智学協会)を作る。これは、宇宙とつながることで、近代社会の問題を克服しようという考えがベースになっている。ちなみに、ヒトラーは、シュタイナーを敵視していた。
シュタイナーの考えでは人間の成長は7年ごとに節目がある。そのため、教育的な見方も、それに沿ったものになっている。21歳までには「真・善・美」を理解し、世界と自分との一体感を見出して、自律的に生きることができる人間を目指す。
第一・七年期(0~7歳)は、肉体の感覚器官が十分に発達する期間のため、毎日の生活リズムを重視する時期とされている。この時期には、無意識でも「世界は善で満ち溢れている」ことを理解する環境をつくる。
第二・七年期(8~14歳)は、感情の成長が課題になる時期。教科教育から具体性をなくして、芸術的な教育をする。「世界は美しい」と感じられる教育を目指す。
ちなみに、亡くなった男児は10歳。シュタイナーの考えでは、男児はこうした時期にあったということだ。
第三・七年期(15~21歳)は、抽象概念や思考力を身につける。「世界は真実だ」との認識ができる教育を目指す時期だ。
こうした教育的な発想は、期間だけをみても、いわゆる「6・3・3・4制」の教育システムとは違うことがわかる。どの段階で抽象概念が必要になるのかという点でも明確に違う。目指すべき方向性も違う。そのため、育ちのスピードや育ち方も一般の学校に通う者とは違ってくるといえるだろう。
■宮沢賢治とシュタイナー
亡くなった子どもが通っていたNPO運営の学校のホームページによると、同学校では、宮沢賢治とシュタイナーに共通性を見出していたようだ。もちろん、宮沢賢治は教育の方法論などは示していないが、宮沢賢治の精神が、シュタイナー教育の実践に息づいていると考えているようだ。
<両者に共通していることはこれからの人類の課題は成長していく人間の自我が自然と宇宙のつながりながら、人と繋がり、そしてその中ですべての命が共存できる新しい豊かな社会を築き上げていくための大切な手がかりをこの時代を生きる私たちの世代に残してくれたことでした>
自我と宇宙とのつながりを求めている教育ですが、亡くなった男児の内面では、どのような思考がなされていたのだろうか? そして、今回の件と何か関連があるのといえるのだろうか? 今のところは、関連のある・なしはわからない。
(文=渋井哲也)
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2024.10.02 20:00心霊哲学的自殺の可能性はあるのか? 小4男児の不可解な首吊り事件とシュタイナー教育のページです。自殺、渋井哲也、哲学、小4、シュタイナーなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで