毒蛇に噛まれ、死ぬまでを記録した科学者 ― 最期の記述「午後1時30分…」

・1957年9月25日
 アフリカから送られてきた蛇の検査中に、誤って左手親指の付け根を噛まれる。蛇の右の牙が3ミリほど入りこんだ。

・午後4時30分から5時30分
 電車で自宅へ帰る途中に強い吐き気がする。しかし吐いてはいない。

・午後5時30分から6時30分
 全身に震えと寒気を感じる。38.7度の発熱。口内の粘膜、歯茎からの出血が見られる。

・午後8時30分
 トーストを2枚食べる。

・午後9時から12時
 よく眠れる。

・午前0時20分
 排尿。量は少なく、ほとんどが血液のようである。

・午前4時30分
 水をコップに1杯飲むが、強烈な吐き気によって嘔吐する。ほとんど消化されていないトーストを確認する。気分が改善し、6時30分まで眠る。

・9月26日午前6時30分
 体温は37度。シリアルとポーチドエッグを乗せたトースト、アップルソース、コーヒーを朝食にとる。尿はでない。口と鼻から出血が続く。

・午後1時30分
 昼食後嘔吐する。大量の汗をかく。妻を呼ぶが、答えることも話すこともできなくなる。

毒蛇に噛まれ、死ぬまでを記録した科学者 ― 最期の記述「午後1時30分…」の画像2カール・パターソン・シュミット博士 画像は「SciFri」より

 博士による記述はここで終わり、その後病院に搬送され、午後3時に死亡が確認された。また、博士は正確な毒による症状が観察できなくなると言う理由で、治療を拒否したことも確認されている。死亡後の解剖では、肺、腎臓、心臓、脳からの出血が見られ、ブームスラングの毒の特徴と一致している。

 研究にのめり込み、周りが一切見えなくなった科学者の話を耳にすることも少なくない。命を懸けて研究に没頭する科学者も多くいるだろう。しかし、シュミット博士の例は、実際に自分の研究に命を捧げたというか、研究に命を奪われたきわめて数少ない例なのかもしれない。
(文=高夏五道)

参考:「Medical Daily」ほか

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