読者よ、あなたの審判を! 広島の元アナウンサー「窃盗」事件に冤罪疑惑

■迫る最終審判

 では、これほど冤罪を示す事実がありながら、なぜ1、2審の結果は有罪だったのか。弁護人の久保豊年弁護士は2審の判決公判後、次のように述べた。

「“被害者”とされる女性が現金の入った封筒を置き忘れ、警備担当の人がこの封筒を手に取り、行員の女性に手渡した時にはお金が入っていなかった。つまり、この間に何者か盗んだに違いない。そういう思い込みが裁判官たちの判断構造の前提にあります。そしてこの間、記帳台に近づいたのは煙石さんだけだということで、犯人だと推認されたのです」

 実際、1、2審判決共に「犯人がわざわざ封筒からお金を抜き取り、封筒を記帳台に戻すということがありえるのか」という最大の疑問に一切答えを示していない。裁判官たちが封筒にお金が入っていたと思い込んでいた証左だろう。

 最高裁では毎年2000件前後の刑事事件の判決が出ているが、逆転無罪判決は年に1、2件だ。単純に数字だけを見ると絶望的だが、煙石さんは前向きにこう語る。

「みなさんの支援もあり、3年間がんばってこれました。私に起こったことは他の人にも起こりうることです。こういうことは絶対にあってはならない。少しでもいい方向に行くことを祈っています」

 2審判決が出た日(昨年12月11日)からすでに1年近く経過し、最高裁の審判が下される日はそう遠くないはずだ。少しでも多くの人にこの事件に注目してほしい。
(取材・文・写真=片岡健)

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ノンフィクションライター。全国各地で新旧様々な事件を取材している。著書に『平成監獄面会記』(サクラBooks)、編著に『桶川ストーカー殺人事件 実行犯の告白』(KATAOKA)など。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会記」』(カルトコミックス、作・塚原洋一)が8月8日に発売。
Twitter:@ken_kataoka

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