「落書きの家」― 家の壁面に書かれた怪文書

「落書きの家」― 家の壁面に書かれた怪文書の画像6

(1)「サミット “自民が恐怖”間に合った脳切除!STOP外出 ブッチ切り出世 1983年7月 永久主任」

(2)「1983東京ディズニーランドオープン 株・配当金どろぼう」「1998年 開かれない株主総会」

(3)「300億円の紙くず 10年」

 まず(1)については、ほかの場所にも書かれている「脳切除」ネタ。ただし「ブッチ切り出世 1983年7月 永久主任」については相変わらずその文意が不明瞭である。もしかすると、これは前掲の税や年金に対する不満の際に対応した自治体の職員について言及している部分なのかもしれないが、正直これだけでは判断が難しいところだ。

(2)については、たしかにTDL自体は1983年4月15日のオープン(アトラクション数32。A-Eまであるアトラクションチケット1枚が100~400円)であり、(1)でも触れられているこの年の7月15日には、後に爆発的な大ブームとなる任天堂のファミリーコンピューター(HVC-001/メーカー希望小売価格14800円)が発売されるなどのビッグイベントが相次いだが、無論、そうした出来事と彼の主張との直接的な因果関係については一切不明である。また、TDLを運営するオリエンタルランドが「株・配当金どろぼう」と批判されるような出来事は、今に至るまで発生していない。

 最後の(3)については、その表現から類推して、経営破綻などから、「300億」の株券が一夜にして紙くずになったという意味合いではないかと推測される。だが、過去の巨額破綻を丹念に見ても、それと思しきものは発見できなかった。ただ、「脳切除」に関する部分以外に概ね共通しているのは、巨大資本や国家権力、社会体制といったものへの批判、すなわち、ある種のアナキズムにも似た思想である。彼の中では、巨万の富を動かす資本家も、多くの人々の上に立つ政治家も、公僕も、そしてそれに抗うことなく惰性に任せて生きるかのように見える大衆についても、その時代ごとのマジョリティとは違った偏差が、見解の中で生じているのかもしれない。

 続いて、かなり傷みが激しい壁面右下を見ていく。ここに記されているのは、

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「なぜかボロボロ 腐る タイプⅠ(ワン)の耐水合板 カナダ産ツー・バイ・フォー材 こんなの有りか 木質系シージングボード 消防法的安全度 家命奪う 作る財産 十八から株投資をする 公務員は居ないが 実力勝負の決断力」

 ここではかつてその問題性が指摘された輸入建材に関する批判のようであるが、よくよく見ていくと、「ボー(ド)」と「安全(度)」のように、ややラップ調の文章であることも見てとれる。

「木質系シージングボード 消防法的安全度 家命奪う 作る財産」

 それっぽい音程で口にすると、なかなかの出来である。「作る財産」のフレーズが残す独特な余韻とザックリとした勢いも秀逸だ。

 そしてさらに傷みが激しい正面部分へ。ここには…

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