「落書きの家」― 家の壁面に書かれた怪文書

 こちらは壁面とは違い、その材質の関係から滲んでしまっているため、判然としない部分もあるが、大きく記された「闇」という文字が印象深い。

「落書きの家」― 家の壁面に書かれた怪文書の画像4

 前出の「右脳切断で両目左側半盲」と大きく関係がありそうだが、現時点においては、その意味がわかるようで、その実てんでわからないといった感は否めない。また、全体を俯瞰した時に浮かび上がってくる「Cut 両目 闇 盲(もう)ナナハン乗れない」という一文は、ついついラップ調に読み上げてみたくなる衝動には駆られるものの、実際には意外とそれが難しいことに気づかされるちょっとした怪文である。なお、この一文に記された「盲」は「もう(英「already」の意)」の引っかけかもしれないが、だとすれば、なかなか言葉遊びの得意そうな家人と言えるだろう。これまた見ようによっては、実にキャッチーな表現上の工夫である。

 さて、今度は敷地内にぽつねんと佇む小屋の壁に視点を移す。ここは地の色が茶ということもあり、文字の判別は比較的容易だ。しかし、ところどころ判然としない箇所もあるため、そこはご容赦願いたい。一応、ざっくりとこの面に記された主だった文字を拾っていくと(※以下、判読不能な文字は「()」として記しておく)、

「落書きの家」― 家の壁面に書かれた怪文書の画像5

「左半分の土地を奪われるのを止めた男が25年ぶりに 八三八闇を 帰ってきたら 元気に死()に入った」

「983年 両目左半盲 予告の頭殺し 前に消防団 代死四のゾロ」

「右脳切断そして暗闇の左 一夜に五百kmを走る 大好きな750バイクと車を失い 外出の自由を奪ったその医学」

「大株主作るYOU老人 止まらない手術のユーロ」

「死者達の そして全山手線内を走り回った大株主の目、筋肉、関節、脂肪、骨、自転車行動の自由」

「「利益」と「防災」執拗に迫る「強盗犯罪」」

 字面どおりにその言葉を理解しようとすると、ゲシュタルト崩壊にも似た現象が起きてしまい、割と頭がクラクラしてくる内容ではあるが、「大株主作るYOU老人止まらない手術」と、やはりというか何かの楽曲の歌詞ではないかと思われる言葉遣いが目に入る。今時、このような「YOU」の使い方をするのは、ジャニー喜多川氏くらいのものであろうが…。

 また、仮に983年と838をいずれも年号だとするならば、前者が平安貴族の時代で、後者が遣唐使(~894)で知られる頃。とてもこの家の家主がその頃を知っているとは思いがたい。なお、「代死四のゾロ」については、一見、サイコロ博打の符丁のようにも見えなくもないが、これまた謎のフレーズである。ただ、これだけ文意不明の怪文書を並べても、前出のものと比較して共通するのは、例の「右脳切断」とバイクに関する記述。どうやら家人にとっては、そのふたつが人生の中で大きな影響を与えたものであるようだ。

 今度は、壁面左側上部を写した画像を観察してみる。ここに記されているのは、大きくわけて次の3つ。

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