「反日精神は脊髄反射であって思想ではない」ラブホ最上階に住み三重スパイを疑われた在日韓国人が激白!

「反日精神は脊髄反射であって思想ではない」ラブホ最上階に住み三重スパイを疑われた在日韓国人が激白!の画像1画像は、『実録・北の三叉路』(双葉社)より

 朝鮮半島出身の父と、在日韓国人2世の母をもつ在日コリアン2世の女性、安宿緑(やす・やどろく)氏が執筆した爆笑系の自伝書『実録・北の三叉路』(双葉社)を紹介したい。

 三叉路とは、三叉に分かれたいわば「Y字路」を指す。本書ではこの「3」が大きなテーマとなっており、「日本・韓国・北朝鮮」どこにも属さず、三重スパイの嫌疑をかけられたこともある三十路の著者の目線はいつもY字路の真ん中に立っている。

 また、筋金入りの腐女子である著者は、オタク目線から日・韓・北の「リア充・非リア充」たちを観察し続ける。つまり、ここにもY字路が存在し、カルチャー的な目線から三国を眺めたときの特殊な見え方が本書の見所でもあり、読者の笑いを誘う要素となっている。

 しかも、著者が影響を受けているのはBL漫画をはじめ、『聖闘士星矢』『スラムダンク』などの日本の漫画。つまるところ、日本の漫画に影響を受けつつ、北朝鮮の教育を学び続けたということになる。そんな著者のアイデンティティは、それはもう日本人が想像することすらできないほど複雑に歪んでいるといっていいだろう。ある時は金日成に抱かれてもいいと思いながら成長し、ある時はニュージーランド人と付き合い、そしてある時は二次元に思いを馳せる。日本では公安に追いかけられたり、右翼に襲撃されたり。北朝鮮に行ったら行ったで「ズボン履いてるから」という理由で5、6回も軍人に捕まるのだ。あまりにもファンキーすぎる人生ではないだろうか? それだけではない。


■ラブ&暴力の間で生きた壮絶な幼少期

 まず、著者の幼少期に驚愕だ。著者はこの環境を『血と骨』にたとえているが、西原理恵子が描く壮絶家族にも通ずるものがある。

 著者は幼い頃に父と母が離婚し、祖父母に引き取られ、都内にあるラブホテルの最上階で暮らすことになる。しかも、玄関は客と同じ。エレベーターの中で、今からセックスするカップルと鉢合わせるチマチョゴリ姿の著者……。なんともシュールすぎる暮らしである。

 祖父は14歳のとき、借金のカタとして韓国から日本に売り飛ばされた人物で、26歳の頃には鉄鋼業に分類されるのだろうか、鉄くず拾いのビジネスで成功し、年収10億円を稼ぎ出したやり手だったという。とはいえ、「ヤレればいいんだろ」といってラブホテルにも一切アメニティを置かなかったという祖父の経営方針に対しては、なぜビジネスで成功したのか著者も疑問らしい。

 そんな祖父は「韓国側支持者」であり、祖母は「北朝鮮支持者」だったことから、政治体制をめぐって殺し合いのようなけんかが日々繰り広げられていた。「北朝鮮帰れ!」「殺すぞ」「馬鹿野郎」という罵声が飛び交うのは日常茶飯事だったそうだ。つまり、家庭内で南北分裂が起きていたということだ。

 とはいえ、もともと祖父は厚い忠誠心をもった北朝鮮派だった。生き別れた姉を看取るために韓国に行ったことで在日本朝鮮人総聯合会(総連)から除名されたことに、韓国派に寝返った所以があるのかもしれないと著者は回想している。

※次ページ 朝鮮学校での生活でみえてきたもの

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実録・北の三叉路

この本ほんとに面白いよー

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