疫病と全面核戦争の末に壊滅的な打撃を受けた世界を完全再現したアノドラマは…

 番組を立ち上げた大塚恭司は、『女王の教室』をはじめとするドラマ演出家として知られる。一方で、無名時代の松尾スズキを起用した『演歌なアイツは夜ごと不条理(パンク)な夢を見る』や、深夜帯の映画番組『月曜映画』をプロデュースし、テクノを用いたタイトルバックを作成するなど、マニアックな演出で知られる。

 番組のモチーフとなったのは山野一の『貧困魔境伝ヒヤパカ』(青林堂)所収の短編漫画「荒野のガイガー探知機」である。核戦争で人類が滅亡し、悪人のオッサンが一人生き残る話だ。世界をさまよう中で、針が振りきれたまま作動するガイガーカウンターに出会い、懐かしい“文明の音”を聞く。そこへ仏が現れ、まったく偶然に涅槃へ迎えられる話だ。311を通過した今ならば示唆的なストーリーと見ることもできる。ゆえに『人類滅亡と13のコント集』を早すぎた予言的番組と礼賛するのはたやすい。だが、この番組にはもっと本質的なものがある。

 番組の企画書において大塚は以下のように記す。“たいていのエンターテイメントが「現実逃避の材料」であり、それと反対にたいていのドキュメンタリーが「娯楽たりえない物」であるのに対し、この番組はその内容が「目前の深刻な現実を直視する物」であるにもかかわらず、面白い物、爆笑できる物を目指している”と。人類滅亡という大文字の言葉の前に、テレビの“中の人”による冷静な批評眼が存在している。娯楽としての現実直視、笑えるドキュメンタリー、深刻なテーマをネタにするお笑いライブ、面白いテレビを目指し、この番組は異質なもの同士とを引き合わせる。その、偉大なるフロンティアスピリッツは評価したい。
(王城つぐ/メディア文化史研究)

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