なぜ人間だけアゴ(オトガイ)を持っているのか?生物学者もお手上げの人体ミステリー
「オトガイの謎に踏み入る前に、もっとほかの説明を幅広く検討する必要がありますね」とパンプッシュ博士は科学系情報サイト「The Atlantic」の記事で言及している。単にひらめいたひとつのアイディアだけで説明することに無理があるということだろうか。ではもっと説得力のある仮説はないのだろうか。
■何の役割も持たない進化の副産物か?
ボクシングや格闘技好きを喜ばせるかもしれない仮説も登場している。それは
●「オトガイは顔面をパンチされたときのダメージを軽減する“プロテクター”として進化した」
という説だ。
昨年、「人間の手は他人を殴るために進化した」という学説が発表されて話題を呼んだが、我々人類はどうやら昔からよく殴り合っていたようで(!?)、特に顔はパンチに耐えられるように形状を進化させていったというのである。その進化の結果のひとつとなるのがオトガイというわけだ。しかしこの仮説もパンプッシュ博士には疑問に映るという。もし打撃に耐えうるように進化してきたのなら、アゴ全体がもっとガッシリする方向へ進化するはずだというのである。
なかなかチェックの目が厳しいパンプッシュ博士だが、では博士自身はオトガイについてどのような説明がふさわしいと考えているのだろうか。
パンプッシュ博士自身は、オトガイは人間が環境に適応するために獲得したパーツではなく、進化の副産物として何の機能も持たずに備わったものであると考えているようだ。約258万年前から約1万年前までの更新世時代の進化の過程において、人間は相対的に頭部よりも顔部の面積が小さくなっていったのだが、顔面が収縮していく過程においてオトガイが形成されたということである。
このパンプッシュ博士の解釈は現在、一定の理解を得ている仮説のようで、古生物学者のスティーヴン・ジェイ・グールド博士や、進化生物学者のリチャード・レウォンティン博士、またアイオワ大学歯学部のネイサン・ホルトン博士らも大筋でこの仮説の支持者であるということだ。しかしながらこの仮説にしても「(古代人と比較して)なぜ下アゴ辺縁部が全体的に縮小していないのか?」などの疑問も残り、この謎の本質に切り込む手がかりは依然として霧の中にあることは否定できないという。
■人体の意味不明なパーツ
そもそも尾てい骨や親知らずの歯、あるいは“のどちんこ”など、人体には何の役割もなく存在しているパーツがいくつかある。唇の下にあるこのオトガイもそんな人間だけにしかない“意味不明”なパーツのひとつということになるが、はたして今後何らかの重要な発見がもたらされるのだろうか。不思議科学的には人類と宇宙人との混血の証明となる身体的特徴である可能性を指摘できるかもしれない。これほどさまざまな解釈が主張されているオトガイの謎、いろんな意味でロマンが膨らむ話題である。
(文=仲田しんじ)
参考:「The Atlantic」ほか
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