「アルバム製作中にガチ幽霊が出現して…」ロックバンド人間椅子のいわくつき新作アルバムがヤバすぎる! 和嶋慎治インタビュー

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■田舎と暴力、青森への近親憎悪


――そのあたり、出身地である青森という土地も影響しているのでしょうか。

和嶋 人間椅子を結成した当初、僕たちはブラック・サバスが好きだったので、ああいうのを日本語でやりたいと思っていました。でもブラック・サバスみたいな世界をただやってしまっても、キリスト教的世界観がないと上手く行かない訳です。僕たちはやっぱり日本人で、初詣をしたりお墓に葬られたりする訳ですから、仏教的価値観・日本的価値観を入れつつやりたい。しかも怖いものを歌いたい、というので始めたバンドなんです。

 ルーツを大事にしないと説得力がない。だから日本語で歌詞を書くということと、僕と鈴木くんの出身地である青森を題材にしていきました。例えば寺山修司も青森に拘りましたが、コンプレックスみたいな拘り方ですよね。「青森ってすげえいいとこだよ」というのではなく、近親憎悪に近い。それは分かるんです。本当に田舎だし、土着的な暗さだとか、人間の悪い部分がムキ出しになったりする部分もある。「田舎の人はみんな親切でいい人ですね」という訳はなく、どうしても「欲」というのから離れられない。イジメも普通にあるし、校内暴力という問題が世間に知られたキッカケも青森の学校からでした。都会の人が隠している「欲」「暴力」を、田舎の人はムキ出しにして暮らすのかな、と……ちょっと言葉を選ばなくちゃダメだな(笑)。

 僕も東京に出てきて長いので、ああやっぱり青森って独特だな、と客観的に見られるようになりました。ああいう場所の若者は、郷土愛が強く田舎に残って仕事していくか、田舎が嫌で出ていくかの、どちらかなんですよ。僕は「田舎から出たい!」というタイプだったので、寺山のアンビヴァレントな想いはよく分かる。

 そういえば弘前のねぷた祭りも、今はだいぶ観光化されてますよね。でも僕らが子供の頃は、首が飛んでいくような血みどろの絵だったりと、もっと残酷だったんです。ねぷたの裏側は「見送り絵」といって女性を描くのですが、昔はけっこう裸が多かったですね。血なまぐさい絵の裏で、普通に乳房を丸出しにしていたり。あとは女幽霊の絵も多かったし……まさに死とエロス。それを小さい頃に見てたもんだから、トラウマというか強烈な印象として残ってます。

 青森市のねぶたは一説には「凱旋」を表しているそうで、戦争に勝ったぞという勇壮な感じなんですよね。でも弘前のねぷたは「出陣」だから、まだ勝つか敗けるか分からない、これから死に赴くところ。青森市みたいにラッセーラーと行進せず、なんかお通夜みたいに普通に引っ張っていくんですよ。また僕らが子供の頃はちょうどアングラ演劇が盛り上がっていたので、「夜行館」という劇団がねぷたを引っ張りにきてましたよ。全員白塗りにして、血みどろの山車を引っ張っていくんだから、すげえ怖かった。鈴木くんも、その影響を受けて白塗りにしているんですよ(笑)。


■イタコにジミ・ヘンドリクスを呼んでもらった

――青森にはまた、恐山もありますよね?

和嶋 僕の姉が恐山のふもとに住んでいたので遊びにいったら、街の人たちが普通に「昨日、死んだ○○さんが歩いてたよ」と日常会話で話している。青森県民にとっても衝撃的でした。イタコの口寄せもありますし、ふつうに死者と交流できる場所なんて世界的に見てもすごいエンターテインメントですよ。

 僕も一度、大祭の時にイタコに口寄せしてもらったことがあります。まあ企画として行ったので、ジミ・ヘンドリクスさんを呼んでもらったんですけどね。ちゃんと「わだしはジミ・ヘンドリクスだ」と南部弁でジミヘンが出てきて、色々しゃべってくれました。イタコさんには事前に情報を伝えているので、そのあたりはちょっと懐疑的になったりもしましたが……最後に「皆さんと仲良く暮らしなさい」とか「身体に気をつけろ」というすごく良いメッセージをいただきました。生きている人に「ちゃんと生きろ」と伝えるのはすごく大事なことですよね。だから僕は今でもジミヘンが本当に降りてきたと思ってます。「健康に気をつけろ」ってジミヘンが言うなよ、とは思いましたが(笑)。まあ、苦しんで死んだ人だからこその言葉なんでしょうね。

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